『20th Anniversary Album -rippihylosophy-』インタビュー
飯田里穂が語る、芸能活動20年で見出した音楽の届け方と人生哲学「今さら取り繕った私は魅力的に見えない」
飯田里穂が、芸能生活20周年を記念したアルバム『20th Anniversary Album -rippihylosophy-』を12月4日にリリースする。2000年に子役として女優デビューし、2010年に『ラブライブ!』星空凛役で声優デビュー、2015年にはソロアーティストとしてのキャリアをスタートした飯田里穂。同作には、小学6年生の頃に歌ったというNHK教育『天才てれびくんMAX』の「サンデーモーニング」、初の声優参加作品『ラブライブ!』のテーマソング「僕らのLIVE 君とのLIFE」のほか、飯田里穂が参加するアニメ作品のキャラクターソングやソロ楽曲のセルフカバー、最新作「いつか世界が変わるまで」など、彼女の20年間がギュッと詰まった一枚に。
タイトル『rippihylosophy』(リピロソフィー)は、飯田の愛称である“リッピー”と“哲学”をかけあわせた造語だという。収録楽曲と共に歌手活動を振り返りつつ、20年間で得た経験と様々な出会いから、各時代を象徴する楽曲を“今の飯田里穂”が歌う意味についてたっぷり語ってもらった。(編集部)
舞台劇みたいな感覚が強かった初のアコースティックツアー
ーー11月3日から10日にかけて愛知、大阪、埼玉の3箇所で初のアコースティックツアー『Riho Iida Acoustic Tour 2019 -rippihylosophy-』を開催しましたが、そもそも飯田さんがアコースティックライブを行うこと自体が初めてのことだったんですよね?
飯田里穂(以下、飯田):そうなんです。正直、決まったときはそこまで深くは考えていなかったんですけど、いざ形になってきたら「こんなにも自分の歌声で舵を取るのか……あれ、これってハードル高いやつじゃない? とんでもないツアーだな!」と気づきまして(笑)。そもそもアコースティックライブというと弦楽器のイメージが強いですけど、今回はピアノと歌だけでしたからね。
ーー歌に自信がないと、確かに厳しい状況ですよね。
飯田:そうなんです! それこそステージとはまったく別の話題ですけど、私は普段からよく喋るので、声をすごく大事にしなくちゃってことで、ライブ当日はそれこそメイクをしているときも、昼夜2公演の間も一切喋らず。あんなに楽屋で静かだったのは生まれて初めてかもしれないです(笑)。でも、その黙っている自分にも面白くなっちゃって。それぐらい、いつものライブとは違いました。だから、埼玉での最終公演が終わったあとのはっちゃけ具合は、逆にすごかったですよ、「喋れるぞー!」みたいな感じで(笑)。
ーー開放感が(笑)。実際、アコースティックライブ自体はいかがでしたか?
飯田:ピアノを弾いてくれた文ちゃん(畠中文子)と1対1だったのがよかったのかな。ピアノがベースとリズムとメロディという、バンドで連なるものをすべて担当してくださっていたので、ここは文ちゃんの両腕の中に飛び込む感じでやったほうがいいかなと思って、胸を借りるつもりで臨みました。
ーー実際に僕も埼玉最終公演を観させていただきましたが、終始気持ちよく楽しめましたよ。
飯田:私も歌っていて気持ちよかったです! 音がたくさん詰まったバンド形態もすごく楽しいんですけど、自分が歌うときに大切にしていた歌詞の背景とか意味とか気持ちをアコースティックで、ピアノだけをバックに伝えられる楽しさも知れましたし。それこそステージ上からお客さんに届けているのは歌なんですけど、文ちゃんとは舞台の上でお芝居をしているような感覚に近かったんですよ。すごく不思議で、「私、こうやって歌いにいくけど、あなたの感情はどうなの?」みたいなにセリフを言いあっているような感じというか。
ーーああ、なるほど。1対1の掛け合いだからこそ、よりそのように感じたんでしょうね。となると、公演を重ねるごとにその空気も変わっていったんでしょうか?
飯田:そうなんです。会場に来てくれたお客さんが作る雰囲気を私たちが受け取って、それによって文ちゃんの音色がちょっと激しくなったりすると、「あなたがこういう感情で来るなら、私はこう歌うわよ」みたいな。私と文ちゃんとお客さんとの三角形の舞台劇みたいな感覚が強かったです。これはバンドだと味わえなかったものかもしれませんね。
ーーあとは、あれだけアレンジとして装飾が少ないと、メロディの良さを改めて実感できますよね。
飯田:確かに。わりと私の楽曲はスルメみたいに噛めば噛むほど味わえるようなものが多いので、そういう楽曲をアコースティックアレンジにすると今までとは違う胸への響き方があるんだなというのは、新しい発見でした。
成長が一番ダイレクトに伝わるのが「サンデーモーニング」
ーーそのツアーに続いて発表される今回のアルバム『20th Anniversary Album -rippihylosophy-』ですが、全12曲中、昨年のミニアルバム『Special days』やシングル「いつか世界が変わるまで」を除く10曲が、過去に飯田さんが歌ってきた楽曲やアニメのキャラクターソングを再レコーディングしたもの、あるいは飯田さんが関わったアニメ作品の楽曲を飯田さんのボーカルで録音したもの。20年の歴史の中から10曲に絞る作業は相当大変だったんじゃないかと思いますが。
飯田:めちゃめちゃ大変でした。まず、スタッフさんに今まで私が関わった曲を一覧表にしてもらって、そこに事務所の人たちが「これは入れたいかな?」と各々チェックマークを付けて、最終的に提出し合うというやり方でした。
ーー皆さんが選んだ曲ってバラバラでした?
飯田:面白いことに、絞る作業は大変だったけど、最終的に選んだ楽曲は意外と一緒だったんですよ。これだけ違う年代の人たちの意見が合致するということは、もしかしたらCDを手に取ってくださる、私のことを子役の頃から応援してくださっている人たちも「そのへんの曲が入っていたらうれしいかな」とも感じたので、そこからはわりとスムーズに進みました。もちろん、CDに入れたい曲はもっといっぱいありましたけどね。
ーーそんなアルバムのオープニングを飾るのは、『天才てれびくんMAX』(以下、『天てれ』)で小学生だった飯田さんが歌っていた「サンデーモーニング」という懐かしい1曲です。
飯田:小6のときの歌なので、もう15、6年くらい前なんですよね。
ーー今の飯田さんが歌うことで、この曲の良さや魅力をどう伝えたいと考えましたか?
飯田:当時番組を観てくれていた人がわりと今もライブに来てくれていて、「りっぴー、大人になったね」と思ってくれていると思うので、写真のアルバムじゃないですけど「私、こんなに成長しました」みたいな感覚が一番ダイレクトに伝わるのが、この「サンデーモーニング」なんじゃないかな。今までもライブでは歌ったことはあったんですけど、それを形として残したことはなかったので、改めて「大人になった私が歌ったら」みたいなものがここに詰まっている感じがします。それに、この曲の作詞・作曲はつじあやのさんなんですけど、いろんなご縁があって昨年の『Special days』では「聞こえてくるのは君の声」という曲で作詞をしていただいて。ずっとつながっているんですよね、「サンデーモーニング」から今もずっと。
ーーそういう縁やつながりがあったからこそ、20年も続けてこられたわけですものね。
飯田:本当にそうですね。20年も活動していると、懐かしい人と再会できる瞬間があるんですよ。例えば、10年ぐらい前にご一緒した方にまた会えて、成長した姿でまた一緒にお仕事ができるという。その積み重ねという気がしています。
ーーよく10年をひとつのサイクルと例えることがありますけど、20年というとさらにもう一周する感じなのかもしれないですね。
飯田:そうかもしれませんね。20年前に子役としてこのお仕事を始めて、ちょうど10年前ぐらいに声優さんも始めた。確かに10年サイクルですね。じゃあ私、人生3周目なのかな(笑)。