香取慎吾、ソロアーティストとしてどんな表現を目指す? 先行配信曲「Trap」などの方向性から探る
香取慎吾が11月1日0時、デジタルシングル「Trap」をリリースした。ちょうど1カ月前に配信リリースされた「10%」に続くこの曲は、海外のR&B/HIPHOPのトレンドとも重なるトラック、濃密なグルーヴを感じさせるラップを軸にした“攻めた”ナンバー。この楽曲をフックにしながら、ソロアーティスト・香取慎吾の方向性を探ってみたい。
まずはソロ第1弾として発表された「10%」のことから。〈HEY!HEY!ギブアップ!YOU! EVERYBODYBODY皆YOUにギブアップ!〉という威勢のいいコーラスから始まるこの曲は、バウンシーに飛び跳ねるビート、エレクトロとファンクが心地よく混ざり合うアレンジメント、解放感のあるメロディラインがひとつになったポップチューン。音像、歌詞を含めて“元気で明るい香取慎吾”のパブリックイメージに近く、ソロ活動のスタートをわかりやすく印象づけることに成功した。ソロアーティストのスタートとしては理想的だったと言っていい。
今回の「Trap」は、トラックメイク、リリック、ボーカリゼーションを含めてさらに一歩踏み込み、ディープな音楽性を予見させる楽曲だ。しなやかなキック、70年代のソウルを想起させるようなオルガン、メロディアスなシンセベースなどを融合させたトラック、しっかりと抑制を効かせながら徐々に熱を帯びていくメロディライン。ソウル、ファンク、ヒップホップ、エレクトロ、ハウスなどが有機的に結びついたこの曲の音楽性は、たとえばジェイミーXX、トム・ミッシュ、チャーリー・プースなどグローバルポップのトレンドを担うアーティストとも通じている。
サウンドプロデュースを手掛けているのは、森善太郎。シンガー、ラッパー、トラックメイカー、フォトグラファーなど幅広いジャンルで活動する11名のクリエイターによるSoulflexの中心メンバーとして知られる森善太郎は、プロデューサーとしてSIRUP、向井太一などの楽曲を手がけてきた。ルーツミュージックに根差した生音の響きを活かしながら、最新鋭のヒップホップ、R&Bにつなげる彼のセンスは、「Trap」でも存分に発揮されている。SIRUP、向井太一のスタンスと同じように、海外のトレンドを反映させつつ、日本語のポップスとして昇華させた楽曲と言えるだろう。作詞・作曲のクレジットには”Singo”の名前も記されているが、トラックメイカー、トップライナー、シンガーによるコライトもまた、ソロアーティスト・香取慎吾の特徴。つまり「Trap」には、彼自身のメロディや言葉の感覚もしっかりと反映されているのだと思う。
ラップと歌をナチュラルに共存させたボーカルも魅力的だ。低音域、中音域の響きを活かしながら、英語と日本語が混ざったリリックを気持ちよくグルーヴさせる“メロラップ”は、シンガーとしての香取慎吾の新たな表情を感じさせる。厚みのあるふくよかな声質、そして、先鋭的なトラックを乗りこなし、歌詞の“意味”と“ノリ”を自然に結びつけるフロウもまた、彼の大きな武器だ。