ヴィジュアル系バンドにはなぜ“専任ボーカル”が多い? 3つのポイントから考察

V系バンドにはなぜ“専任ボーカル”が多い?

 もちろん、楽器を弾くボーカルもヴィジュアル系初期からいる。たとえば、Plastic Treeの有村竜太朗(Vo/Gt)。彼は、The CureやRadiohead、My Bloody Valentineなど、ボーカル&ギターを擁するバンドの熱心なリスナーだ。また、有村の幽玄な歌唱方法は、身体の力を振り絞るようなものとは異なるし、彼が活動を始めた90年代は、“振り付け文化”も根付いていなかった。彼がボーカル&ギターの道を歩んでいるのは、自然なことだろう。Plastic Treeと同様の音楽的ルーツが感じられるumbrellaの唯も、ボーカル&ギターとして活動している。

 ギタリストが歌うようになった例も少なくない。Dué le quartzのギタリストだったMIYAVIは、バンド解散後のソロ活動でボーカルを取り、自らを“エンターテイナー”と称した。これは彼の「なんでもやろうとする」性格を表している(引用元:BARKS)。Develop One's Facultiesのyuyaは、前バンド・cocklobinではギター担当だったが「自分の理想としている声の人がいなかった」(引用元:Vif)と歌うようになった。逆に、キズの来夢(Vo)は、reiki(Gt)が「僕の中ではいついなくなってもおかしくないメンバー」だからと、ギターを練習するようになったという(引用元:BARKS)。「平成」のMVで彼はアコースティックギターをかき鳴らしている。その姿は、彼らのようなメタル/ハードコア主体のバンドにおいて珍しく、新鮮に映る。

 さて、Anli PollicinoのShindy(Vo)は、バンドのボーカルにとって一番大事なことは「美学」だと語った(参照元:ウレぴあ総研)。彼らが選んだ表現手段には、それぞれの美学が反映されている。先人のスタイルを彼らなりに昇華した新たな美学は、未来のアーティストに受け継がれ、また新しい美学を生み出していくのだろう。

■エド
音楽ブログDecayed Sun Recordsの管理人でバンドマン。ヴィジュアル系とメタルをよく聴く。

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