ヒゲダン、長谷川白紙、花澤香菜……ロックやポップスでも発揮されるillicit tsuboiの手腕

 ここで挙げた例で言えば「パン」や在日ファンクの作品がまさにそうだと思うのだが、illicit tsuboiのサウンドは「生々しい」けれど「生っぽい(=ライブ感がある)」のとはまた違う。録音され、ミックスされたサウンドとして真に迫る鳴りをする。これはやはりサンプリングを中心にしたヒップホップの方法であったり、世界中のレコードをディグした経験であったりから得られた、録音されたマテリアル特有の「生々しさ」への鋭敏な感覚に由来するのだろう。

 ひるがえってヒゲダンの「Rowan」も、illicit tsuboiのサウンドが持つ「生々しさ」がヒゲダンのバンドとしてのキャラクターに対してスパイスのように作用する一曲となっている。いくらでもそつなく整えられそうなところに、キャラクターの強いサウンドを挟み込むチャレンジ精神は、実際功を奏したようだ。

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる