「テレビが伝える音楽」第8回
『ミュージックステーション』はどう変わる? 新ゼネラルプロデューサーに聞く
音楽の魅力を広く伝えるメディアとして、大きな機能を果たすテレビの音楽番組。CD全盛期に比べて番組数が減少する中、それぞれ趣向を凝らした番組づくりが行われている。そんななかでも、注目すべき番組に焦点をあてていく連載「テレビが伝える音楽」。第八回では1986年にスタートした生放送音楽番組『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)を取り上げる。放送開始から33年で初の放送枠を移動し、金曜夜9時からに“引っ越し”をする同番組。ロゴやスタジオセットも一新され、新たに小田隆一郎氏がゼネラルプロデューサー(以下、GP)に就任。これまではバラエティ番組を多く手がけてきたという小田氏に、リニューアルする『ミュージックステーション』についてはもちろん、これまでの放送で印象に残っている演出などについても話を聞いた。(編集部)
“生ならでは”の要素をもっと取り入れていけたら
ーー小田さんがこれまで関わってきた番組を教えてください。
小田:実は新入社員の頃、2年くらい『ミュージックステーション』を担当していました。それからバラエティに移って。今も関わっていますが、マツコ(・デラックス)さんの『夜の巷を徘徊する』、『くりぃむナンチャラ』とその前身番組『シルシルミシル』を7年くらい担当していました。あとは『SmaSTATION!!』や『虎の門』など。だから21年の時を経て『ミュージックステーション』に戻ってきたんです。今は『題名のない音楽会』も担当しているので、色々な音楽番組を融合していくような環境も作れればいいなと思っています。
ーーそんな小田さんが今回『ミュージックステーション』のGPに抜擢された理由は何なのでしょう?
小田:現在の局次長で『シルシルミシル』を一緒にやっていたバラエティ班で僕の上司だった藤井(智久)からは、「放送枠も変わるから客観的なスタンスで、これまでと違う新しい目線で、音楽番組を変えていってもいいんじゃないか」と言われました。長く続いている番組だから、何か変えたりトライしてみようというのが一つだと思います。
ーーGPに抜擢された時の率直な感想はいかがでしたか?
小田:テレビ朝日ではGPの仕事って本当に多岐にわたるんです。後輩・部下の勤務管理や、廊下の片付け指導から、番組の演出、危機管理……。僕は多様な仕事ができるタイプだと思っていなくて、一つの仕事に集中する方が向いていると思っていました。だから最初は「向いてないんじゃないか?」と。ちなみに“ナスD”もGPですが、彼は超ストイックな演出家肌なので……(笑)。
ーー放送枠が金曜の20時から21時に移動して、リニューアルするということですが、これからどんな番組にしていきたいですか?
小田:“視聴者もアーティストも参加する、『みんなでつくるMステ』”を1つのテーマに掲げています。生放送中に視聴者がSNSやリモコンのdボタンなどを利用して、内容にコミットできるような企画もやっていきたいですね。視聴者が生投票して、アーティストが歌う楽曲を決めたり、アイドルの歌終わりの決めポーズを選んだり。実は、18日の3時間スペシャルでは最後の5分、歌う楽曲が決まっていない空白の枠があって。その場にいるアーティストに協力をお願いし、放送時間内に新たな曲を作って生で演奏してもらう、というチャレンジングな企画も考えています。
『ミュージックステーション』が始まった80年代後半、『ザ・ベストテン』などもあった時代は生放送が1つのトレンドでした。『ミュージックステーション』はそこからずっと生放送を続けている番組です。今までは、VTRやトークがあって歌のパフォーマンス、というシンプルな内容でした。その基本構造は変わりませんが、現代だからこそできる“生ならでは”の要素をもっと取り入れていけたらいいなと考えています。
ーーバラエティ番組での経験はどのように生きていくと思いますか。
小田:僕が長年担当していた『シルシルミシル』はVTR中心の情報でした。『Mステ』もVTRはありますので、より楽しく見られるVTRにも取り組んでいきたいです。もちろん、“音楽ファースト”という姿勢はこれからも変わりませんが、VTRやスタジオトークを工夫して、いかにその歌を視聴者に聴きたいと思ってもらえるか、という部分にこれまでの経験が生かせるかなと思います。