センチミリメンタルに聞く、『ギヴン』と自身の共通点「“痛み”はマイナスなものばかりではない」

センチミリメンタル、『ギヴン』との共通点語る

 痛々しい言葉とエモーショナルなボーカルで、リスナーの心を深くえぐることで話題を集めている温詞(あつし)のソロプロジェクト・センチミリメンタル。同様に、バンドメンバーを中心にした切なく狂おしいほどの愛情を繊細に描き、多くのファンを持つボーイズラブ作品『ギヴン』(キヅナツキ/新書館「シェリプラス」で連載中)。この二組の幸運な出会いによって生まれた、話題のアニメ『ギヴン』(フジテレビ“ノイタミナ”ほか)のOPテーマ「キヅアト」、同EDテーマ「まるつけ」のセルフカバーを収録したセンチミリメンタルの『キヅアト』が9月18日にリリース。詞曲やアレンジなどを手がける温詞が、楽曲制作にかける思いやセンチミリメンタルの音楽の根源にあるものについて、すべてを語った。(榑林史章)

『ギヴン』とセンチミリメンタルの出会いは“運命”

ーー今回アニメ『ギヴン』のOPテーマ「キヅアト」、EDテーマで劇中バンド“ギヴン”が歌う「まるつけ」、その他劇中曲「冬のはなし」や「session」も、すべて手がけられているとのこと。新人アーティストがここまで任されるのは、異例なことだと思いますが。

温詞:最初は劇中曲「冬のはなし」を作ってみませんか、というお話だったんです。だから最初に作ったのが「冬のはなし」で、それを評価していただきました。全部任せてもらえるとは夢にも思ってなくて、こういうことになって自分でびっくりしています。

ーー「冬のはなし」は、9話に流れた劇中歌。ストレートなバンドサウンドの曲になりましたね。

温詞:はい。アニメの山口ひかる監督や原作のキヅナツキ先生と、すごく話し合いを重ねました。アレンジは、もっと重たいバージョンやもっと今どきっぽいものなど二転三転しながら、劇中のギヴンというバンドのイメージに合うものに寄せていきました。

ーーもともと「冬のはなし」を手がけることになった経緯は?

温詞:スタッフを介してお話をいただいて、最初はお試しみたいな感じだったんです。今までの僕の曲を聴いていただいて、僕の曲はけっこう色が強いものが多いので、もう少しギターロックバンド的なアプローチをしたものを聴いてみたいということで。それで「冬のはなし」を2曲作って、そのうちの1曲を選んでいただき、先ほどお話した感じでブラッシュアップさせていきました。

ーーセンチミリメンタルの曲は「キヅアト」を含め過去発表してきた「wear」や「死んでしまいたい、」など、言葉がすごく立っていて。痛みを抱えて生きていく感じは、『ギヴン』の中でキャラクターが抱えているものとリンクすると思いました。

温詞:そこには、僕も驚きました。当時お話を持ってきてくださったスタッフの方からも、「絶対合うと思うよ」と原作コミックを渡されて読んだら、想像以上に共通するところが多くて。芯にしているものが、喪失による悲しみだったり、それでも前を向く姿勢というのがあって。僕が歌詞の柱としている部分が『ギヴン』にもあったので、僕の嘘偽りない気持ちを曲に込めたら、自然と作品に沿ったものが作れると思いました。セリフの言葉も、僕がもともと持っているものと近くて共感できる言葉ばかりで、コミックを読んだ時はスムースな没入感というものがありましたね。メジャーデビューして初めてのタイアップで、これだけ相性がいい作品と出会えたのは幸運だと思います。

ーーキヅナツキ先生は、どんな印象でしたか?

温詞:先生も言葉を大切にされている方で、原作コミックにもポエム的な一文が散りばめられているなど、漫画以前に文学として作品にこだわりを持っている方だと思いました。歌詞の部分で衝突することも、まったくなかったです。

ーー考え方や感性的に、似ていると思うところはありましたか?

温詞:作品からも読み取れるのですが……絶望や悲しみ、痛みなどの“傷”というものにすごくフォーカスしていて。でもそこで終わらず、未来に対しても目が向いているところに、とても共感しました。センチミリメンタルの曲も、痛みだけでなくちゃんと希望までを描きたいということを、自分のこだわりとして持っています。誰しも絶望する日はあっても、最終的には希望に向かわないと生きていけない。同じ世界を共有している感覚で、とても心地よい現場でした。

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