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BAD HOPになぜ惹きつけられるのかーーリリックに宿った“リアリティ”に迫る

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 7月31日にNetflixオリジナル作品として人気漫画『ケンガンアシュラ』のアニメがスタートした。この作品は企業間の対立を「拳願仕合(ケンガンジアイ)」と呼ばれる地下格闘で決着させる世界の物語で、企業に雇われた猛者達による超人的なステゴロが魅力だ。また原作者と編集担当者は豊富な格闘技経験があり、ふたりでバトルシーンを実際に再現して、作画の細部を修正するエピソードが単行本巻末にて描かれている。だからこそ、外連味と浪漫に溢れた劇中のバトルはフィクションでも、体重移動や体の力み方の感覚を読者の脳内に再現させるような細部に拘った表現が特徴的だ。おそらく格闘技経験が活きているのは、作画だけではない。ステゴロに近い総合格闘技は、最強の格闘技を追求する異種格闘技を経て生まれた競技であるだ。メジャーな格闘技には無い技術や、知られざる強者が次々と発見され、その度に技術論が世界的に進化する少年マンガのような歴史があるのだ。その興奮を呼び覚ますような豊かなキャラクターや技術のアイデアも、格闘技経験者ならではのものだろう。( Netflix公式によるケンガンアシュラ予告は、CGによる描写に賛否両論が起きているがそれだけ作画が評価されていることが伺える)

Kengan Ashura | Teaser [HD] | Netflix

 その『ケンガンアシュラ』のエンディングに、BAD HOPの新曲「Born This Way(feat.YZERR& Vingo & Bark)」が採用された。フィクションのような現実から出てきたタトゥーだらけの青年達の曲が、リアリティを追求したフィクションの作品で起用される。個性的なキャラが入り乱れる『ケンガンアシュラ』と、豊かな声色とフロウが魅力のBAD HOPという点でも、相性バッチリだ。序盤のYZERRのヴァースが突如Vingoの高い声へと切り替わる瞬間がどうアニメになるのかを勝手に妄想していたが、残念ながらVingoの部分はカットされ、YZERRとBarkによるダウナーな部分のみが使用されていた。仕方がない。

BAD HOP『Born This Way』

 それでも、物語の主人公である十鬼蛇王馬の育った環境に通じる生い立ちを持つBAD HOPが描く世界は、やはり『ケンガンアシュラ』に合致する。いや、むしろ同作はBAD HOPらしさが色濃く出ている。ただBAD HOPらしさと言っても、ファンでなければ彼らの印象は、イカつい川崎のグループで元はラップバトル出身、くらいのものかもしれない。今一度、「Born This Way」のメインを歌うBAD HOPのリーダー、YZERRを中心に彼らを紹介したい。今の成功はYZERRが手繰り寄せたものとすら思えるのだ。

 まずバトルブームの火付け役としてBAD HOPよりも先に、中心人物であるT-PablowとYZERRが有名になったのは事実だ。2012年7月に放送された第1回目の『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』。これに川崎から双子の不良兄弟が出場した。結果、トーナメントの決勝は兄のK-九と、地元の後輩であるLil Manとの川崎対決というドラマを生んだ。初回の熱気冷めやらず、回を追うごとに話題となった『高校生RAP選手権』こと“高ラ”は、後のラップバトルブームに大きく貢献をしてきたことは間違いない。

 Lil Manと互いを鼓舞するような決勝を制して初代王者となったK-九は、T-Pablowと改名して第4回に再出場する。そして2度目の優勝を果たすのだが、後に弟のYZERRが普段着で挑もうとした兄を引き止め、40万近く投じて服を一新させたと語っている。不良漫画のような美談に聞こえるかもしれないが、YZERRは「その40万円は後々、何千万〜何億円になると思った」と振り返る(参照)。この野心溢れるビジネスマインドこそが、彼らの魅力であり、説得力の土台だ。

 「僕たちは音楽を『売ろう』とは思ってない」とも続けてYZERRは語っているが(同上)、楽曲販売のみならずBAD HOPはキャリアで大一番となる瞬間を、稼ぐチャンスと捉えていない。2階建ての家をステージに建てたZepp Tokyoのワンマンも、急遽空いた平日を満席にした武道館ワンマンも、ギリギリの収益しか無いことをYZERRは自身のラジオ番組『#リバトーク』で明かしている。勿論、彼らが金に疎いはずがない。YZERRは金で何かを得られる・得られないの見極めが鋭く、チャンスには投資へ踏み切れる野心家なのだ。それには、彼らの出身地である川崎の町が由来しているのかもしれない。

      

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