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BAD HOPに続くスターは現れるか? 渡辺志保が注目の若手ヒップホップクルーを解説

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 ここ数年、日本のヒップホップシーンでは若いクルーが騒がしい。

 本来、ヒップホップシーンは特に同じ地元出身のアーティストたちが集ったり、先輩が後輩をフックアップしてツルみながら行動したりすることが多い。結果、自らを中心としたクルー(=団体)を作り上げて、より自分たちの作品やアーティスト活動を鼓舞するという向きがある。ソロアーティストのライブにもかかわらず、ステージに大勢の人物が大挙して一緒に場を盛り上げている様子を見たことがある人もいるかもしれない。こうした場合、ステージの上に立っているのはクルーのメンバーだ。

 日本では、2016年に東京の世田谷エリアを中心とするクルーのKANDYTOWNがメジャーデビューを果たし、双子のMC、T-PABLOWとYZERRを中心としたBAD HOPもインディペンデントなやり方で巨大なファンベースを築き上げている。今年、『フジロックフェスティバル ’18』のレッドマーキーでDJを行ったプロデューサーのChaki Zuluと、彼とともに目まぐるしいほどのショットライブを行ったYENTOWNの面々も、海外でのライブを盛んに行いながら多様性に富んだ活動を続けている。今、名前を挙げたクルーの面々がある種の成熟ポイントに向かっている一方で、巷では新たな若いクルーが増殖中なのだ。

Tokyo Young Vision

KM『FORTUNE GRAND』

 まず紹介するのは、Weny Dacilloを中心としたTokyo Young Visionである。Weny Dacilloは2017年に発表したシングル『1000%』、そしてEP『AMPM』が高く評価され、同じく2017年にDJ CHARI & DJ TATSUKIによるアルバムプロジェクトの一環として発表された「ビッチと会う feat. Weny Dacillo, Pablo Blasta & JP THE WAVY」でも、独特の言語センスを活かしたフックで好印象を残している。力強くスピットするというより、一言ずつをリスナーに訴えかけるような、メロディアスなフロウが特徴的なMCだ。最近、ビートメイカーのKMが発表したアルバム『FORTUNE GRAND』からのリード曲「Distance feat. Weny Dacillo,Taeyoung Boy & Lui Hua」でも、同世代のMCであるLui HuaとTaeyoung Boyとともにノスタルジック情景を描き出している。

ビッチと会う feat. Weny Dacillo, Pablo Blasta & JP THE WAVY / DJ CHARI & DJ TATSUKI
KM 「Distance feat. Weny Dacillo,Taeyoung Boy & Lui Hua」
Hideyoshi『Never Be the Same』

 そして、同クルーに所属するHideyoshiも注目すべきラッパーの一人。アメリカではXXXテンタシオン(今年、20歳の若さで逝去した)、リル・ウーズィー・ヴァートといった、ロックミュージックにも影響を受けながら厭世感や内省的な感情をラップする、いわゆる「エモラップ」の潮流が盛り上がっているが、Hideyoshiもまたそうした系譜に連なるセンスを孕むラッパーである。今年の6月に発表されたEP『Never Be the Same』を聴けば、MVも作られた「くだらない」を筆頭に、瑞々しくエモーショナルな楽曲群に驚くことだろう。筆者の個人的な感想だが、彼のフックにおけるメロディアスなフロウは、My Chemical Romanceあたりのエモロックに共通するようなバイブスを感じる(事実、Hideyoshiは実兄の影響でこうしたロックバンドの音楽にも触れていたようだ)。

Hideyoshi – くだらない (Official Video)
Normcore Boyz『TOKIO TELEPORT』

 そして、Tokyo Young Visionに所属するラップグループであり、今、大いに注目を集めているのがNormcore Boyzだ。Gucci Prince、Young Dalu、OSAMI、Night Flow MikeそしてSpadaのお台場出身のMC5名で構成されており、メンバーの年齢も十代後半から二十代前半までとぐっと若い。2018年7月にデビューEP『TOKIO TELEPORT』(ご存知、お台場の最寄駅の一つは東京テレポート駅)をリリースし、その翌月の8月にはいきなり『サマーソニック2018』への出演も果たすという、めまぐるしいほどのスピードでキャリアを積んでいるグループである。メンバーの特性は、「気取らず等身大で素直にいろいろなことを楽しめるところ」(グループ談)だという点。特にライブパフォーマンスはクールな迫力もありながら年齢相応のはつらつさも兼ね備えており、機会がある方は是非一度体験してほしい。「何事にも勢いがつくし、5人全員がたくさんムーブすれば掛け算みたいにどんどん新しいことが増えていく」とメンバーが答えてくれた通り、無限の可能性を秘めたグループでもある。

Call I – feat. OSAMI&Young Dalu (Official Video)

 そして、Tokyo Young Visionにはラッパーだけではなく、DJやビートメイカー、映像ディレクターまでもを擁しているのが特徴的だ。最近では、ビートメイカーとしても活躍している若干17歳のMC、fox4GがMV「Overhead」を発表し、若い才能に驚かされたばかり。ちなみにWeny DacilloもHideyoshiも、もともとはMCバトルのシーンでも活躍していたラッパーである。Normcore Boyzの中にも初期の高校生ラップ選手権に触発されてラップをスタートしたというメンバーがおり、ヒップホップシーンの代謝の良さというか、彼らを取り巻く時代が移ろうスピードそのものに驚くばかりだ。

fox4G – Overhead (Official Video)

MaisonDe

MaisonDe『The MaisonDe』

 クルーが活躍しているのは、東京だけではない。兵庫県姫路市を拠点に活動しているのがMaisonDeという8人組のクルーだ。MaisonDeの中心となっているのは、Shurkn Papと名乗るMC。本格的にラップをスタートしたのは2017年頃(去年!)だというが、すでに海外の大手ミックステープサイトの『Dat Piff』にて無料のミックステープ『Various』をリリースしていたり、ビートメイカーデュオであるKNOTTとのコラボ楽曲「The WEEKEND」を発表したりと、広範囲かつ精力的に活動しているアーティストの一人。今年の6月に公開された「Road Trip」のMVは、これまでにJP The WavyやAWICHといった次世代の日本人ヒップホップアーティストの映像作品を次々と手掛けてきた若手映像クリエイターのSpikey Johnがディレクターを務めていることも話題になった。「Road Trip」はどこかUSの西海岸を思わせるような爽やかさを感じるファンクサウンドにShurkn Papの小気味良いフロウが乗り、中毒性を孕んだ一曲。派手なドレッドヘアを束ねた彼のルックスにも注目だ。

Shurkn Pap (MaisonDe) – Road Trip (Dir.by Spikey John)

 筆者も、今年8月に渋谷のClub Asiaに出演した彼のライブを観たばかりだが、すでに堂々としたパフォーマンスで、特に「Road Trip」の時にはオーディエンスの多くが、その様子をカメラに収めようとステージに向かって一斉にスマホを向けていた姿も印象的だった。また、MaisonDeとしても9月30日にEP『The MaisonDe』を発表したばかり。メンバーのショウケース的な全4曲のタイトな構成ながら、バラエティに富んだ楽曲が収録されている。また、姫路にほど近い加古川市には、高校生ラッパーのMerry Deloという注目株もおり、DJ TY-KOHがフックアップし、かつ川崎のラッパー・KOWICHIが参加した「Scooter Remix」も巷で話題を呼んでいる。

DJ TY-KOH – Scooter (REMIX) ft. Merry Delo & KOWICHI
      

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