SANABAGUN.、結成からの道程を振り返り感じた変化 『2013 – 2018』“White Black”レポ
「栴檀は双葉より芳し」というが、SANABAGUN.のライブシリーズ『2013 – 2018』の第1回目となる“White Black”で感じたのは、「SANABAGUN.はそもそもSANABAGUN.だった」ということだ。
今回のライブシリーズは『2013 – 2018』と銘打たれているように、SANABAGUN.の結成から現在までを振り返りつつ、その道程をライブに落とし込むという構成で進められている。まず、そこで感じるのは、SANABAGUN.の結成が「2013年」ということである。まだそれしか経っていないのか、とも思わされるし、その間にあった、岩間俊樹のMCリベラルとしてのアルバム『I.MY.ME』のリリースや、高岩遼のソロ『10』やTHE THROTTLEやSWINGERZとしての動き、小杉隼太と櫻打泰平の脱退と、大林亮三(Ba)と大樋祐大(Key)の加入などの様々な事象を振り返ると、もう6年も経つのかとも思わされ、SANABAGUN.という有機体の変異が感じさせられる。
同時に、今回のライブは各回ごとに、SANABAGUN.がこれまでリリースしてきた作品を時代順に2枚ずつピックし、その楽曲群を披露することもコンセプトとなっている。そしてその初回となる“White Black”は、彼らの原点である渋谷の路上パフォーマンス時代に手売りでリリースされていた通称「白盤」と、インディとして全国流通リリースされ、彼らの存在を音源として広く知らしめた『Son of a Gun』、通称「黒盤」の二枚を中心として、ライブは構成された(余談だが、MCで高岩が「白盤がメルカリで高値で取引されている」と話しており、確認したところ「8888円」で売られていたのは、出品者もなかなか気が効いていた……あまり褒められた話ではないが)。
そのライブは、「白盤」のオープニングを飾る「フーチークーチーメン」からスタート。ステージに登場したメンバーは、今年3月に行われた主催ライブイベント『DEAD PRESIDENTS』での全員揃いのズートスーツ姿、つまりキャブ・キャロウェイのようなオールドスクールなジャズメンスタイルとは対象的な、メンバーそれぞれてんでバラバラなファッションに身を包んだ、路上時代を想起させるラフなストリートスタイル。そこからも彼らの原点を感じさせられる。
ただし、路上時代と大きく違うのは、その音圧だろう。もちろん、それは渋谷の路上とライブハウスという対比ではない。その演奏精度であったり、演奏力、パフォーマンス力の仕上がりと整合性。そういった総合力は、当然のことながら5~6年前とは全く違うし、その「腕力」は、ホーン隊の鳴り、リズム隊の刻み、メロディ隊の響き、そしてボーカル隊の表現力、全てにおいて格段にビルドアップしていた。
それもあってか、そしてオーディエンスの熱気もあってか、「M・S」などの初期SANABAGUN.を代表する、粘っこいファンクネスが貫かれた曲も、ただ粘着質に終わるのではなく、そこに「グルーヴの強み」が当時とは比較にならないほどに溢れていた。
一方、「Driver」や「大渋滞」といったキャッチーにスウィングする曲での“つかみ方”も路上で鍛えられたものだろうし、そのHIPHOP/ジャズ/ファンクなど様々な要素が渾然としながらもしっかりとリスナーを捕まえる術の高さはSANABAGUN.らしさを感じさせるし、その手腕も格段に上がっていた。また、SANABAGUN.として最初に作られたと高岩がMCも話していた「Stuck IN Traffic」の、完全にどうかしてる(褒め言葉)シアトリカルさも、いまのSANABAGUN.にしっかり繋がっているし、その意味でも「栴檀は双葉より芳し」という冒頭の言葉を想起させられた。そして「さっちゃん」での怪談話(しかもステージを真っ暗にして、岩間と高岩は下から懐中電灯を当てるという演出)など、「果たしてそれは曲にする必要が当時からあったのか」と思えるような“ゆとり”の部分であったり、ギターの隅垣元佐もマイクを握る「DA インフルエンザ」など、その自由度もSANABAGUN.をSANABAGUN.たらしめる部分であろう。