演歌とヴィジュアル系、サウンドの意外な共通点 “氷川きよしV系化フィーバー”から考える

 演歌とヴィジュアル系ーー。

 どちらも世の中のトレンドに左右されることなく、脈々と受け継がれている日本独自の文化である。一見、真逆のように見える2つのジャンル。今回は氷川きよしがヴィジュアル系にチャレンジしたが、逆にヴィジュアル系のバンドマンが演歌の世界に足を踏み入れるパターンもある。THE MICRO HEAD 4N’Sのドラマーとして活動するTSUKASAは2015年から世界初のヴィジュアル系演歌歌手・最上川司としてデビューしている。最上川自身も父親の影響で幼い頃から演歌の魅力に触れ、ヴィジュアル系バンドと演歌歌手の二足の草鞋を履く現在に至っている。

最上川 司 (Mogamigawa Tsukasa) - まつぽいよ (Matsupoiyo)

 たまたま流れていた演歌に何気なく耳をかたむけると、ディストーションギターの泣きのフレーズが耳に入り、思わず“かっこいい!”と思ってしまったことはないだろうか。元MEGADETHのギタリストであるマーティ・フリードマンは演歌に強い影響を受け、ことあるごとに演歌とメタルに共通点を語っているように、誰もが知っている石川さゆりの「天城越え」や吉幾三の「雪國」のイントロの渋いフレーズやチョーキング、ロングトーンはハードロック/ヘヴィメタルに通ずるものがある。また、音楽的な定義がないヴィジュアル系のサウンドのルーツの1つとしてハードロックやヘヴィメタルが挙げられる。そこで鳴っている歪んだギターの音こそ、ヴィジュアル系を含むハードロックやヘヴィメタルと演歌に通ずるものなのではないだろうか。このようなことから今回、ハードロックを氷川きよしが歌うことの違和感のなさと、表現の手段として彼が好きなヴィジュアル系を用いたことには納得がいく。

 もちろんこの曲は『ドラゴンボール超』の主題歌であるので、歌詞も孫悟空を思わせるものになってはいるが、〈可能性のドアは施錠(ロック)されたまま やれやれ…今度も壁をブチ破る〉〈意外性を秘めたヤツが生き残る〉という歌詞は今回の氷川きよし自身のことでもあるのではないかとさえ思える。演歌歌手というイメージの壁を見事にブチ破り、ロックシンガーとしての意外性を発揮した氷川が2019年、そして令和元年の顔になるのかもしれない。ぜひとも年末の『NHK紅白歌合戦』で妖艶な姿を見せ、あの動画のようセクシーな目つきでお茶の間を睨みつけてくれることを楽しみにしたい。

■オザキケイト
平成元年生まれの音楽ライター。ヴィジュアル系を中心にライブレポートやコラムを執筆している。「Real Sound」や「ウレぴあ総研」、その他バンドのプレスリリースにも寄稿。
ツイッターアカウント:@lellarap__

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