ねごと、最初で最後のベスト盤は“進化のドキュメント”に 収録曲からバンドの歩みを辿る

ねごと、ベスト盤からバンドの歩みを振り返る

 2008年に開催された第1回『閃光ライオット』で審査員特別賞を受賞し、2010年に『Hello! “Z”』でメジャーデビューして以降5枚のアルバムを発表。昨年12月に、惜しまれつつも今年7月20日での解散を発表したねごと。彼女たちのラストアルバム『NEGOTO BEST』が、4月24日にリリースされる。この作品は、結成から12年間にわたって活動してきたバンドのキャリアにおいて初のベスト盤。つまり、最初で最後のベストアルバムとなる。

 まず印象的なのは、2枚組全35曲を通してこれまでの歴史が時系列順に並べられ、アルバム自体がこれまでの進化のドキュメントになっていること。ディスク1にはメジャーデビューミニアルバムとなった2010年のデビューミニアルバム『Hello! “Z”』の収録曲を皮切りに、2011年の1st アルバム『ex Negoto』、2013年の2ndアルバム『5』の楽曲を収録。一方ディスク2には2015年の3作目『VISION』から2017年の4作目『ETERNALBEAT』、そして同じく2017年の5作目『SOAK』までの楽曲が収録されている。同時にディスク1とディスク2の最後にはそれぞれ未発表曲と新曲が収められ、2019年までのバンドの姿がまとめられているのが特徴的だ。ここでは収録曲を通して、改めてその歩みを振り返ってみたい。

 まず、2010年の『Hello! “Z”』と2011年の『ex Negoto』の収録曲には、その後様々な変化を経験するバンドの基盤となる魅力が詰まっている。Galileo Galilei(現在メンバーはBird Bear Hare and Fishとして活動中)やBrian The Sunも出場した第1回の『閃光ライオット』で審査員特別賞を獲得した4人は、この当時はまだ学生。しかし、楽曲の完成度はこの時点ですでに高く、フレーズのループを生かしたダンスミュージックの手法とインディロックやオルタナからの影響とを絶妙な形で融合させている。中でも『閃光ライオット』でも披露していた初期の代表曲「ループ」は、Nirvanaを筆頭にしたグランジ勢にも通じるヒリヒリとしたベースラインからはじまった楽曲が、サビに向けて一気にポップさやスケールを増していくキラーチューン。そうして生まれる高揚感は、以降もバンドの人気を支える大きな魅力になっていった。

ねごと - ループ [Official Music Video]

 続く2013年の2ndアルバム『5』の収録曲は、そうした1作目で追求した4人の個性を、よりポップミュージックのど真ん中に連れ出していくようなものになっている。「greatwall」や「トレモロ」「Lightdentity」など、この時期の楽曲はどれも遠い場所に手を伸ばしていくような熱量が詰まっていて、「Lightdentity」以降はメンバー全員が作詞にかかわる機会も増加するなど、制作体制も初期の頃と比べて変化していった。中でも印象的だったのは疾走感溢れるギターストロークからサビでさらにギアを上げていく「sharp ♯」。胸の鼓動を表現するようなベースとドラム、メロディと対になって耳に残るギターフレーズ、そしてサビでより自由に音階を踏み越えていくメロディが生む“より広い世界に飛び出していくような雰囲気”に、いちリスナーとして興奮したことを今でも鮮明に覚えている。ディスク1に収められているのは、そうしたねごとの核の部分が詰まった楽曲の数々だ。

ねごと - Sharp ♯ [Official Music Video]

 その内容に寄り添うように、ディスク1の最後に収録されているのは、バンドが活動初期に雨の日限定で披露していた未発表曲として知られる「雨」。耽美なギターノイズが印象的なこの曲は、音楽的にはMy Bloody Valentineを筆頭にしたシューゲイザーの音響美や、クラフトワーク~クラウトロックを融合させたThe Horrorsの2009年作『Primary Colours』辺りに近く、バンドサウンドの中で様々な実験を繰り広げた初期の姿が伝わってくる。バンドとしての地盤を固めながらも様々な実験を続けたことが、以降の活動にも直結していったということも、今こそはっきりと感じられるのではないだろうか。

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