新時代を形成する“ダーク・ポップ”の担い手、ビリー・アイリッシュとは何者か?

ダーク・ポップの旗手、ビリー・アイリッシュとは?

 2001年生まれ、17歳のビリー・アイリッシュはトップスターとなることが約束されたシンガーソングライターだ。そもそも、インターネットではすでにスターなのである。正式なデビューアルバムを出していないにも関わらず、Spotify再生数ビリオン超えのストリーム女王。ツアーも即完売させ、2018年には日本でサマーソニックへの出演を果たし、2019年には世界屈指の音楽イベントであるコーチェラ・フェスティバル(米カリフォルニア州)に出演する。ファンダムも強大で、Instagramのフォロワーは約1,500万人、その数はポップの女王マドンナよりも多い(2019年3月23日現在)。

 SNS世代よろしく大企業と契約する前にスターダムを築いたビリーだが、実は、その地位は能動的に望んだものではなかった。はじまりは13歳のころ、ビリーがダンスの先生とシェアするためにアップロードしたダンス用楽曲「Ocean Eyes」がSoundCloudで大ヒット。投稿した翌朝、目覚めるとレコード会社からメールが殺到していたのだという。つまり、彼女が自分自身を売り込む前に、才能が王冠を呼び寄せたのだ。そして2019年3月、ついにデビューアルバム『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』がリリースされる。2020年代を代表するアーティストと予言されるビリー・アイリッシュとは、一体何者なのか。その音楽性からスタイルまで、おなじ平成生まれの筆者が紹介していきたい。

Billie Eilish - bury a friend

 ビリー・アイリッシュは、新時代を形成する「ダーク・ポップ」の担い手だ。音楽性としては、ゆっくりしていて静か、ときにゾッとするほど暗い。しかも、ただダークなだけではない。ビリーはリリックとメンタルヘルス問題を重要視するアーティストだ。たとえば、アルバムのリードシングル「bury a friend」。「友達を埋葬」とは一見過激だが、ここで対象とされているのは「ベッドの下のともだち」、つまり自身の内なる闇ー憂鬱や自己嫌悪ーを指す。こうしたビリーの作品は「最も孤独な世代」を代表するアートとして注目されている。

 現在のアメリカのティーンエイジャーは、最もメンタルヘルス問題を抱えるジェネレーションとされる。その推定要因にはSNS、政治と気候の混乱、そして校内銃乱射が挙げられており、自殺率も急増しているのだ。また、そんな若者たちの憂鬱を反映するかのように、ポップカルチャーも暗くなっている。たとえば、ビリーも楽曲を提供した人気ティーンドラマ『13の理由』は、女子高生が自殺する物語だ。音楽においても、ジュース・ワールドやXXXテンタシオン、リル・ピープなど憂鬱や死を描くSoundCloudラッパーが躍進。そして、2010年代最後の年、ビリー・アイリッシュの1stアルバムによって「ダーク・ポップ」時代が決定すると予想されている。

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WHEN I WAS OLDER out now

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