新時代を形成する“ダーク・ポップ”の担い手、ビリー・アイリッシュとは何者か?

ダーク・ポップの旗手、ビリー・アイリッシュとは?

 アウトローなカリスマ性を喧伝されるビリーだが、その一方でファンとの信頼関係も厚い。あまり笑わないパブリックイメージについて「女の子は笑顔でいることを強いられるから(そのアンチテーゼ)」と語るなど、社会の抑圧にも意識的だ。ファッション面においても、ただスタイリッシュというわけではない。彼女のトレードマークとなっているアイテムは、ルイ・ヴィトンやグッチといった有名ブランドをコピーしたジェンダーフルイドなインディブランド品。権威あるブランドと異なり「製品化」されていないリアルなスタイルが存在すると同世代に伝えているのだという。

 このように、一見クールに見えるビリーは、つねにファンのことを考えているアーティストだ。名声を得た感想にしても「クソだけどファンと会える機会が増えることだけは良い」とするほどに。「声をあげられない人たちの声になること」、これこそビリー・アイリッシュが掲げる目標なのである。デビューアルバム前にワールドツアーを売り捌いてしまう強大な人気は、作品はもちろんのこと、このファン主義あってこそだろう。そのことを表すかのように、モッシュピットで有名な彼女のコンサートでは、多くの女子が熱狂している。

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i love you guys thank you for you

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 “憂鬱な世代”を体現し導く若きカリスマは、ポップ界をサバイブする気概も万全だ。村上隆とのコラボレーションビデオも話題となった「you should see me in a crown」で、ビリーは「ハニー、私には王冠が似合う(あなたはそれを見るべきだ)」と王位獲得を宣言している。2019年、いや、それどころか2020年代を定義しかねないデビューアルバムはまさしく必聴だろう。ちなみに「you should see me in a crown」という楽曲題の元ネタは、人気ドラマ『SHERLOCK』。たった数行のコンピュータ・コードで世界の情報を制したと誇るモリアーティ(主人公シャーロックの宿敵)のセリフだ。稀代の天才によるこの言葉は、たった一曲をアップロードしてスターダムを駆けあがったビリーにこそふさわしいかもしれない。

Billie Eilish- "You should see me in a crown" video teaser

■辰巳JUNK
ポップカルチャー・ウォッチャー。主にアメリカ周辺のセレブリティ、音楽、映画、ドラマなど。 雑誌『GINZA』、webメディア等で執筆。

ビリー・アイリッシュ『ホエン・ウィー・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥー・ウィー・ゴー?』

■リリース情報
1stアルバム『ホエン・ウィー・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥー・ウィー・ゴー?』
発売:3月29日(金)
¥2,376(税込)

ビリー・アイリッシュ ユニバーサルミュージック公式サイト

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