ヒトリエ、ボカロシーン発の“源流”としての存在感 アルバム『HOWLS』にある興奮の方程式
ヒトリエのニューアルバム『HOWLS』が素晴らしい。
メジャーデビューからは4作目。ニューカマーの季節は過ぎ、バンドとしては、いわば中堅としてのキャリアに差し掛かりつつある。それでもなお、いまだキレキレの演奏と目の醒めるような歌を放ち続けている。さまざまなアプローチを試みつつ、その核心に彼らにしか鳴らせないような興奮の方程式を感じさせる。
たぶん、一つのきっかけになったのは「ポラリス」だろう。アニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』のエンディングテーマとして書き下ろされた一曲。そのためか「少年たちのヒーローとなることを引き受けている」感じがする。
00年代以降の日本の音楽シーンでは、アニメとロックバンドが結託することで数々の名曲が生まれてきた。たとえば『NARUTO』とASIAN KUNG-FU GENERATIONの「遥か彼方」のように、たとえば『TIGER & BUNNY』とUNISON SQUARE GARDENの「オリオンをなぞる」のように、たとえば『君の名は。』とRADWIMPSの「前前前世」のように。楽曲と物語のロマンティシズムが結びつくことで両者の魅力が倍増するような回路が機能してきた。
数々のアニメタイアップのヒストリーを掘り下げていけば、その回路によってユースカルチャーの中でロックバンドがどのようにして“少年性”を体現してきたかを一つの文化史として紐解くことができるのだが、それは今回は置いておいて。この「ポラリス」も、まさにそういう系譜に位置づけられる曲だ。
「コヨーテエンゴースト」もいい。
癖の強い4人の演奏を点と点で噛み合わせるようなアンサンブル、高速なテンポにフックの強いフレーズを高密度に詰め込む曲作り、そういう彼らの武器を研ぎ澄ましたような曲になっている。火花を散らすような2本のギターが左右で鳴り、wowakaが早口で歌う。
その一方で、郷愁の感覚も新作の一つのキーポイントになっている。たとえば「SLEEPWALK」はシンプルな打ち込みのビートとシンセからなる曲。
サカナクションにも通じ合うような音空間の作り方と“和”のテイストを感じさせる曲だ。アルバムにはピアノを配したミディアムチューンの「November」やパワーバラードの「青」も収録されているが、そこでも郷愁を誘うメロディの節回しがポイントになっている。