みきとP、2年ぶりワンマン公演で垣間見えた“シンガーソングライターとしての本質”

みきとP、ライブで垣間見たSSWとしての本質

 ボカロシーン発のクリエイターとして多面的な活動を展開するみきとPが、12月20日に東京・代官山 LOOPでワンマンライブ『MIKIROCK BYPASS Vol.4』を開催した。2010年にネットでの活動を開始して以来、「いーあるふぁんくらぶ」(2012年)、「サリシノハラ」(2012年)、「バレリーコ」(2014年)と数多くのボカロヒットを世に送り出してきた彼。近年はA.B.C-Zやわーすた、三森すずこなどのメジャーアーティストにも楽曲を提供し、『こみっくがーるず』『宇宙戦艦ティラミスII』といったアニメ作品の主題歌や、『第69回NHK紅白歌合戦』への出演でも話題となったミュージカル『刀剣乱舞』の楽曲制作を手掛けるなど、音楽作家としても目覚ましい活躍をしている。実に2年ぶりとなる今回のワンマンライブは、そんな彼のシンガーソングライターとしての魅力を余すことなく伝える公演となった。

みきとP

 ギターを手にしたみきとP本人に加え、ギター、ベース、ドラムス、マニピュレーターというフルバンド編成で行われたこの日のライブ。ちょうど同人では6年ぶりとなるニューアルバム『DAISAN WAVE』を発表したばかりというタイミングもあり、セットリストは同作からのナンバーを中心に、新旧の人気曲を織り交ぜたものに。最新アルバムの冒頭にも置かれていたインスト曲「DAISAN GENERATION」と共にメンバーがステージに登場すると、まずは2018年の夏を爽やかに彩った「少女レイ」でライブをスタート。眩しい中にも胸を締め付けるようなセンチメントを宿したその曲調は、切な系ロックの旗手として知られるみきとPならではのものだ。

【ALBUM Teaser】みきとP新作VOCALOID ALBUM「DAISAN WAVE」2018.11.18 /mikitoP

 そこから一気にワイルドなロックへと振り切った「PLATONIC GIRL」では、ボーカロイドの歌声も同時に流され、みきとPはそれと掛け合うように歌ってみせる。ボカロと生声の違和感のないデュエットというスタイルは、彼が2018年に発表した特大ヒット「ロキ」でも追求されていたものだが、今回のライブではその成果を落とし込んだ場面も多く見られたのが特徴だったように思う。

 続いては代表曲「サリシノハラ」を皮切りに、その続編となる「ヨンジュウナナ」「アカイト」を連続で披露するレアな試みでファンを喜ばせると、これまたライブで歌われるのは珍しい「魔王の館は大騒ぎ(Satan's Mey Cry!!)」(みきとPが歌い手のめいちゃんに提供したナンバー)をパフォーマンス。そこから初音ミク生誕10周年のタイミングで発表されたクリエイター讃歌「だいあもんど」を、ふたたびボカロの音声と共に歌唱。アイリッシュパンク調のサウンドも手伝って、会場は一気に陽気なムードに包まれる。

 この日のライブで非常に印象的だったのが、続いて歌われた「夏の半券」と「さよならはきえない」のパートだ。ひとつの恋の終わりとその喪失感を、それぞれ男性目線と女性目線で描いたこの2曲。スクリーンにはMVが映し出され、「夏の半券」では海辺の街のどこか寂し気な景色が次々と投影されるなか、みきとPのやるせない歌声とバンドの徐々にエモーショナルな熱を帯びていく演奏が胸を打つ。一方の「さよならはきえない」では、みきとPはギターの演奏に徹し、歌唱はすべて初音ミクが担当。本来感情を持つはずのないボカロの歌声は、どうしようもないほどに寂しく聴こえ、スクリーンに映る走行中の車から眺める夜の道路、メリーゴーランドやセピア色の風景が感傷的な気持ちを募らせる。映像やミラーボールなどを使った照明演出も含めて、ステージに惹き込まれてしまった。

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