バルーン=須田景凪、2019年最注目アーティストと言われる理由 須田名義で獲得した肉体性を分析

バルーン=須田景凪が注目される理由

 『JOYSOUND』より発表されているカラオケランキングにて、2017年発売曲総合1位、2017年~2018年2年連続10代のランキングで1位を獲得した楽曲「シャルル」(JOYSOUNDカラオケランキング2018年年代別カラオケランキング)。現在もリアルタイムランキングで米津玄師「Lemon」、DA PUMP「U.S.A.」といった大ヒット曲に続いてランクインしている同曲は、10代~20代のリスナーにもっとも支持されている楽曲と言えるだろう。YouTubeの再生回数も2100万回(ボカロ版、セルフカバー版をあわせると3000万再生)を超えている「シャルル」を歌っているのは、現在急激に注目度を上げ続けている須田景凪(すだ・けいな)。2017年からこの名前で活動をスタートさせたシンガーソングライターだ。

シャルル/flower

 須田景凪のキャリアは2013年、ボカロP“バルーン”としてスタートした。ニコニコ動画に「レディーレ」(ボカロ版:約121万回再生/セルフカバー版:約148万回再生)、「メーベル」(ボカロ版:約138万回再生/セルフカバー版:約300万回再生)、「雨とぺトラ」(約290万回再生)といったヒット曲を次々と発表し、瞬く間に知名度をアップ。自身が歌うセルフカバーも大きな注目を集め、シンガーとしての驚異的なポテンシャルを証明した。その才能を端的に示しているのが、前述した「シャルル」というわけだ。

 「シャルル」の中心にあるのは、彼自身の声と言葉、つまり歌だ。この曲で歌われているのは、恋人(あなた)との別れを経験した男子。〈さよならはあなたから言った それなのに頬を濡らしてしまうの〉という歌い出しからグッと引き込まれるが、具体的なシチュエーションは説明されないまま、〈深い青〉〈朝焼けとあなたの溜息〉といったフレーズによって、聴き手に色彩豊かな情景を想起させることに成功している。

 さらに印象的なのは、意味とリズムをバランスよく兼ね備えた〈嫌嫌嫌〉〈否否否〉〈今今今〉など強い感情とキャッチ―な五感を併せ持った歌詞。一瞬でリスナーの心を捉える即効性、そして、何度でもリピートして意味を読み取りたくなる深みを同時に体現していると思う。もちろんボーカルも絶品。一度聴くだけで耳から離れない個性を持ちつつ、あくまでも楽曲の世界を描くことに心を砕いたボーカリゼーションは、他の楽曲にも通じる彼の基本的なスタイルなのだろう。歌のリズムの良さもまた、彼の大きな特徴だ。

 曲の場面展開を演出するリズムチェンジ、主人公の心の葛藤とリンクするようなギターフレーズも、歌の魅力をしっかりと増幅させている。“中毒性があるメロディ”“豊かな表現力を備えたボーカル”“細部までこだわり抜いたサウンドメイク”は楽曲を評する際の常套句だが、この楽曲はすべての要素において、群を抜いている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる