>  > みきとP、作家業で求められる“自我”

テレビアニメ『宇宙戦艦ティラミスⅡ』主題歌シングル『Gravity Heart』インタビュー

みきとPが語る、ボカロPや作家業で求められる“自我”「曲がカッコよければ批判もねじ伏せられる」

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 みきとPが作詞(てにをはと共作)・作曲を手掛けた、テレビアニメ『宇宙戦艦ティラミスⅡ』の主題歌シングル『Gravity Heart』が11月28日にリリースされた。

TVアニメ「宇宙戦艦ティラミスII」主題歌 試聴

 『宇宙戦艦ティラミス』シリーズは、宮川サトシが原作、伊藤亰が作画を務める同名漫画を原作にしたテレビアニメ。2018年4月から6月にかけて第1期が放送され、現在第2期がオンエアされている。主人公は戦闘ロボットのエースパイロット、スバル・イチノセ。本格派SFタッチの絵柄でありながらも、彼を中心にした日常風景がシュールなギャグと共に描かれており、そのギャップがファンの間でも話題となっている。

 第2期のオープニングテーマを手掛けたみきとPは、音声合成ソフトのVOCALOIDで作家活動を行うボカロP。今回のインタビューでは、「Gravity Heart」の制作秘話や『宇宙戦艦ティラミス』の魅力をはじめ、2018年4月に発表したボカロ曲「ロキ」の反響、現在のボカロシーンについてなどを語ってもらった。(編集部)

「しっかりと前フリを効かせてます(笑)」

みきとP

ーーみきとPさんは今回の『宇宙戦艦ティラミスII』オープニングテーマ「Gravity Heart」で、初めて本作に楽曲提供されました。まずは『宇宙戦艦ティラミス』という作品の印象をお聞かせください。

みきとP:自分は今回のテーマ曲のお話をいただいてから初めて観たんですけど、個人的に好きなタイプのアニメだったので、関わらせていただくことができてうれしかったです。これは誰もが思うことだと思うんですけど、絵柄はカッコいい雰囲気なのにいきなりギャグが入ってくるから素直に面白くて。要は緊張と緩和ですよね。シリアスな雰囲気で緊張させておいて、急に観ている側が予想してない方向に曲がっていくから、思わず笑ってしまうというか。いわゆるお決まりの設定でも、それが想像のつかない方向に行きつくことの応酬なので飽きないです。

ーーパッと見は正統派のSFロボット・アクション風を装ってますけど、いざ蓋を開けてみると、主人公のスバル・イチノセを含めキャラクター全員が真面目な顔しておかしなことをしますものね。キャストの皆さんの演技も妙な方向に熱が入っていて。

みきとP:第2期では小山力也さんが主人公のお父さん役(ソウイチロウ・イチノセ)で登場しますけど、僕はあんな感じの声を出す小山さんを初めて観ましたから(笑)。小山さんと言えば犯人を追い詰めたりする役柄の声が多い印象だったので、岐阜弁をしゃべり始めた時は「すごい!」と思って、思わず小山さんの出身地を調べたぐらいで(笑)。実際は京都出身でしたけど、岐阜の人が聞いても違和感がないんじゃないかと思いましたし、言葉の部分でも設定通り作られてるんだなと感じましたね(ソウイチロウ・イチノセは岐阜県関市出身という設定でTVアニメでは原作コミックス、原作担当の宮川サトシさんが方言指導にあたっている)。

ーー今まで放送されたアニメの中で印象的なエピソードを挙げるとすれば?

みきとP:結構ありますけど、第2期ならネオデュランダルにステッカーが貼ってあるシーンですね(第4話「BUT THERE THERE WAS A GIMLET / AI」)。実はそのステッカーの中に『水曜どうでしょう』(北海道テレビ放送)風のステッカーがあるんですよ。自分は『どうでしょう』が大好きなので、普段から車に貼ってるのを見かけたりすると気分が盛り上がるんです(笑)。そういう好きな人が気づくとクスっとなれる細かいネタが入ってるので、いろんな場面で「この部分にも何か意味があるんだろうなあ」って想像が膨らみますし、何回も観返したくなるんですよね。

ーーそんな本作のオープニングテーマを制作するにあたって、制作サイドからはどのようなオファーがあったのでしょうか?

みきとP:最初にお話をいただいた時に、マイナー調でシリアスなイメージの楽曲をリファレンスとしていただいたので、その時点で自分に求められてるものが何なのかを悟ったんです。もちろん作品の中に出てくる言葉を歌詞に使ったり、面白いものをはめ込むこともできるんですけど、この作品はオープニングをド真面目な曲にすることで、本編の内容が際立って面白くなると思うんですよね。それと今回は“みきとP”としてオファーをいただいたので、いわゆる作家モードとして“ロボットアニメの主題歌”を作るというより、自分の持っているものを出したほうがいいんだろうなとは思いました。

『宇宙戦艦ティラミスⅡ』ロゴ

ーーたしかにみきとPさんが作家として楽曲提供される際は“mikito”とクレジットされてることが多いですけど、今回は“みきとP”名義ですね。

みきとP:ぶっちゃけそこまで厳密に決めて分けてるわけじゃないんですけどね(笑)。ただ、今回は“みきとP”としてオファーをいただいたので、単純に頼まれ方の違いというか。それと“みきとP”はボーカロイドのプロデューサーとしての名義なので、アニメとの親和性も多少はあるかなと思いまして。

ーー今回の楽曲の作詞はてにをはさんとの共作になりますが、楽曲制作はどのように進めていかれたのでしょうか?

みきとP:今回はまずテレビ放送用のサビのみの尺のバージョンを先に作って、そこから広げて全体を作りました。歌詞は曲を作りながら何となく浮かんだ言葉をまとめつつ、浮かばなかった部分は空欄にしておいて、それをてにをはさんにお渡ししたんです。それを元にてにをはさんが叩きを作って、そこから二人で相談しながら作っていきました。サビの後半の折り返しの部分はもともと〈答えはいつも自分の中にある〉といった意味合いの日本語の詞だったんですけど、「なんかここで英語がきそうじゃない?」という話になったので、〈The Answer is always in your mind〉と英訳してハメてみたらめちゃくちゃカッコよくなったので活かしました。まあ、英訳と言っても翻訳ソフトを使っただけなんですが(笑)。

ーー歌詞には〈太陽のエナジー〉や〈バラバラになった 星屑達〉といったフレーズが散りばめられていて、みきとPさんが普段書かれる楽曲とは異なるクールな趣きがあります。やはり今回の曲はカッコよさを際立たせようという狙いがあった?

みきとP:そこは共作の面白味でもありますし、今回はカッコよさや、切なさ、ちょっと傷を抱えてる雰囲気とか哀愁みたいなものを出そうと思って。僕はもともと切ない曲を書く傾向にあるので、そこは意識的というよりも自然とそうなった感じなんですけど。でも、カッコよくするほど本編とのギャップが生まれるので、そういう意識は制作時にずっと持ってました。

ーーサビの〈愛のグラビティ〉というワードも印象的でした。

みきとP:最初に第2期は“家族愛”がキーワードになるというお話を伺ったので、観てる方にもその雰囲気が伝わるようにと思って。第2期はスバルの兄貴(イスズ・イチノセ)やお父さんがたくさん登場するので、家族の血の繋がりと作品の舞台になっている宇宙を掛け合わせた言葉として“グラビティ=引力”をテーマにしました。

ーーアレンジ面で『ティラミス』らしさを意識したところはありますか?

みきとP:宇宙を舞台にした作品なのでスペーシーな音を入れたりはしましたけど、逆にいわゆるアニソンっぽくならないようにしたところが工夫かもしれないです。僕は1期のオープニングテーマの「Breakthrough」が好きなんですけど、それとは似ないように、普通のバンドが演奏してもおかしくないアレンジにしようという意識があって。

ーーなぜ、アニソンっぽくないアレンジにしようと思ったのですか?

みきとP:先ほどお話した内容に繋がりますけど、今回は“みきとP”としてオファーをいただいたので、何か既存のものに寄せるというよりも、自分らしく、作品から感じ取ったものをズバッと出そうと思ったんです。ただ、今回はオープニングアニメの尺も普通のアニメより短くて、30秒の中でキメっぽいところを含めて収めなくてはいけなかったので、そこはアニソンの最低限のセオリーを守って作ったところではありますね。短い尺なので歌で始まるようにしたりとか。

ーーこの楽曲は主人公のスバルによるキャラソンということで、声優の石川界人さんが歌唱をされてますが、その点で工夫した部分もあるのでは?

みきとP:もちろん石川さんのキーに合わせて作ってはいますけど、逆に石川さんが歌うことをあまり意識せずに「この曲を石川さんはどういうふうに歌ってくれるだろう?」という期待を込めた部分が大きいです。デモの仮歌は自分で歌ったんですけど、実際に石川さんが歌唱したものを聴かせていただいたら、やっぱり自分の歌と違って『ティラミス』の世界観になってましたし、期待してた部分をうまく表現していただいて、いい意味で曲と作品を接着していただきました。

『宇宙戦艦ティラミスⅡ』キービジュアル

ーー2番に〈手を伸ばせば「ここにいる…」〉とつぶやくパートもあって、そこでスバルのキャラクター性をより強く感じました。

みきとP:やっぱり声優さんの曲を書くときはセリフっぽいものを入れたくなるんですよね。今回もそう思って提案させていただいたんですけど、当たり前なんですが僕が言うよりも遥かに良い仕上がりになってました(笑)。そこは聴いてくれる『ティラミス』ファンの方もきっと喜んでくれるんじゃないかと思います。

ーーアニメの本放送でオープニングアニメをご覧になった際の感想は?

みきとP:僕の書いた曲がアニメのオープニングに使われるのは初めての経験だったので感動しましたね。『ティラミス』は昔のアニメみたいに放送開始と同時にオープニングが流れるところもいいし、第1話のオープニングではまだ「Breakthrough」が使われていたので、第2話から「Gravity Heart」が流れたことで聴き慣れた曲から突然新曲に変わるインパクトもあったと思うんですよ。それを観てる人に感じてもらえたらうれしいなあと思いましたね。

ーーアニメのオープニング映像も、いかにもシリアスなドラマが起こりそうな作りで、本編とのギャップが絶妙ですよね。

みきとP:だからやっぱり一度アニメを観てもらいたいですよね。観て初めて「ああ、こういうことだったのか!」ということに気づける曲だと思うので。しっかりと前フリを効かせてますから(笑)。

      

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