>  > 岩里祐穂、作詞家との対話から得た発見

『作詞のことば 作詞家どうし、話してみたら』インタビュー

岩里祐穂が語る、5人の作詞家との対話から得た発見「詞は一面ではなくいろいろな側面を持っている」

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 作詞家・岩里祐穂が書籍『作詞のことば 作詞家どうし、話してみたら』を上梓した。およそ2年間に渡り、高橋久美子、松井五郎、ヒャダイン、森雪之丞、坂本真綾の5名を招いて行われたトークイベントを対談形式でまとめた同書には、歌謡曲からロック、アイドルソングまで様々な楽曲の制作秘話やそれぞれが仕事と向き合う姿勢などが収められている。

 今回リアルサウンドでは岩里祐穂にインタビューを行い、作詞家同士で語り合おうとした経緯やゲスト5名との対話から得た発見などについて詳しく話を聞いた。(編集部) 

5人の作詞家に共通していた“書きすぎない”ということ

――今回の書籍『作詞のことば 作詞家どうし、話してみたら』は、2016年8月から2018年2月にかけて行われた岩里さん主催のイベント『Ms.リリシスト〜トークセッション』での対談の模様をまとめたものです。そもそも何故、作詞家同士によるトークライブを企画したのでしょうか?

岩里祐穂(以下、岩里):作詞家は裏方の仕事なので、私はそれまであまり表に立つことはなかったんですけど、2016年に作詞生活35周年のCD(『Ms.リリシスト〜岩里祐穂作詞生活35周年Anniversary Album〜』)を出した時に、いくつか取材を受けたり、ブックレット用に(坂本)真綾ちゃんたちと対談させていただいたりしたんですね。そのなかで、自分が作詞した歌詞に対して、私が意図していたことと、周りの人の受け取り方にちょっとした違いがあることを感じたんです。例えば、自分にとっては他愛もない言葉なのに「この言葉に助けられました」「泣きました」と言ってもらったりして……あの強気な真綾ちゃんでさえ「「プラチナ」の〈もっと もっと つよくなりたい〉のところでグッとくるんですよ」なんて涙ぐんでくれたりして(笑)。

 それとは別のタイミングで(高橋)久美子さんと知り合う機会があったんですけど、私は以前から彼女が書いた(チャットモンチーの)「シャングリラ」という曲の歌詞が変わってるなと思っていたので、それについて聞いてみたんですね。そしたら「あのタイトルの〈シャングリラ〉は女の子の名前なんですよ」と言われて、そのことを知らなかった私は「えーっ!」って驚いてしまったんです。

 だから、詞において作詞家本人が考えてることというのは一面的なものであって、歌詞には書いた本人が思うこと以外の側面があるんじゃないかと思ったんです。ということは、作詞家同士でお互いの歌詞について話してみたら、書いた本人にはわからなかったことに気づいてもらえたり、歌詞をもっと立体的に解釈できるかもしれないと。そう思ってトークセッションを企画しました。第1回のゲストに久美子さんを呼んだのは、私が「シャングリラ」で受けた衝撃をたくさんの人にも知ってもらいたかったからですね(笑)。

――その時点で対談の内容を書籍にまとめる構想はあったのですか?

岩里:最初そのつもりはなかったので、第1回の時はお互いの歌詞については2曲程度しか話してないんですけど、第2回の松井五郎さんの時に、第1回とは全然違う内容になったりしていろいろ違って面白かったので、これは何らかの形で残しておきたいと思ったんです。対談の模様は先にリアルサウンドさんにWEBレポートを上げていただきましたけど、書籍はそれよりもテキストの分量を増やしてますし、5回分を通して本で読むと、WEBとはまた違った味わいが出るんじゃないかと思ったんですね。

――本書には、高橋久美子さん、松井五郎さん、ヒャダインさん、森雪之丞さん、坂本真綾さんとの各トークセッションの模様が収められていますが、この5人を対談相手に選んだ理由は?

岩里:もちろん他にも話してみたい方はいっぱいいたんですけど、まず5人ともとりあえずお話してみたかったんです。松井さんは私が35周年の時に初めてメールでご連絡をいただいて、今まで全くお会いしたことがなかったので、一度お話できればと思いました。ヒャダインさんはももクロちゃん(ももいろクローバーZ)の楽曲で出会って興味があったし、真綾ちゃんとはよく会うけれどちゃんと歌詞の話をしたことなんてなかったので。雪之丞さんは作詞家の中でも音楽寄りというのかな……作詞家というのは文学寄りと音楽寄りの二つに大きく分かれると思うんですけど、私は元々シンガーソングライターだったこともあって、自分のことを音楽寄りの作詞家だと思ってるんですね。自分は楽曲を理解して初めて詞を書くことができるし、詞先が得意じゃないのもそんなところがあるからだと思っていて。雪之丞さんもバンド出身の方なので、そういう部分でお聞きしたいことがあったんです。

――高橋さんは元ドラマーで、松井さんは元々ヤマハポピュラーソングコンテスト出身、ヒャダインさんも自作自演家として活動を行ってますし、坂本さんは他者への作詞提供もされてますが基本はアーティスト。そういう意味では、岩里さんを含め全員がミュージシャン寄りの作詞家と言えるかもしれませんね。

岩里:そうですね。松井さんはどちらかといえばフォーク寄りの方かもと私は勝手に想像していますが。私もその昔はニューミュージックと呼ばれる音楽をやっていましたけど、本当はゴリゴリのロック好きなんですよ(笑)。

――普段、作詞家同士で歌詞について話し合う機会はあまりないと思うのですが、実際にトークセッションでお互い向き合って話し合うことで、表現者同士だからこそわかりあえることもあったのでは?

岩里:それはもうたくさんありましたね。私たちは普段、ディレクターや作曲家と打ち合わせしながら詞を書いているわけで、他の作詞家の方と深くお話することはないんですね。でも、今回いろんな方と話してみたら、みなさん作詞に対する考え方がいろいろ違っていて。ただ、面白いことにひとつだけ、みんな別の表現ではあるけれど同じことを言っていることに、後から気づいたんです。それは「書きすぎない」ということなんですね。

 ヒャダインさんが対談の中でキャッチコピーのように「重要なのは、いかに言わずして言うか」とおっしゃっていましたけど、例えば久美子さんは「全部を書いてしまうと詞にならない」、松井さんは「言い切らずに曖昧にするのが自分流」というようなことを言っていて。真綾ちゃんも「(歌詞の受け取り方は)聴き手に任せる」と発言していましたし、そこは「リスナーに想像してもらって初めて詞が完成する」という意味で同じことだと思いました。それにしても、みなさん歌詞に対するアプローチが違っていて、毎回気づかされることがありましたね。

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