集団行動、齋藤里菜の“開花”に寄せる大きな期待 映像演出も取り入れた初の着座公演ワンマンを見て
今回、何度も幕間映像が挿入された。その映像は、椅子にロープで縛り付けられて座っている齋藤が舞台に立っているミッチー(ベース担当)に助けを求めるというもの。ステージ上のミッチーが(映像で流されている)齋藤を助けるべく舞台から捌けると、スクリーンでは齋藤が「何しに来たの? 次の曲が始まっちゃう、早く戻って」と言って突き返す。ミッチーの帰りを待たずに次の曲のイントロが始まり少し経ったあたりでミッチーが合流、という演出が何度か繰り返された。
この“男を振り回す女性役”を楽しそうに演じる齋藤の活き活きとした表情は、ライブ会場のムードを掌握する彼女のボーカリストとしての役目をあたかも比喩するかのように輝いていた。トイレ休憩(!)中に流された“フォークデュオ”という名前の架空のユニット(真部似のSHUと西浦似のKENがメンバー)のビデオも風刺が効いていて思わず笑ってしまった。着座公演ならではのこうした映像による演出は、異質ながらも彼らのこれからの活動の軸になっていくかもしれない。
「充分未来」で手拍子を煽るクールな姿や、アコースティック編成で見せたバンドとしての振り幅、「ホーミング・ユー」でのライト演出など特筆すべきはいくつかあるが、それよりもこの齋藤里菜という“つぼみ”が今まさに開きそうな瞬間にとても興味が湧いた。現時点で彼女にはちょっとしたオーラも出てきている。彼女の今後の成長次第でこのバンドの未来がどこへ向かうのか、彼女がどうやって“縛られたロープ”をほどくのか、期待せずにはいられない。
■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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