GUY×TOSHI-LOW『アコースティック不法集会』への思い「この形でしか伝わらないものがある」

『アコースティック不法集会』インタビュー

“一面性”だけでは押せない世の中になっている

ーーバンドとアコースティックで歌う側として変わる部分とかはあるの?

TOSHI-LOW:例えば火をつけるとすれば、バンドだと焚きつけるみたいなイメージ。一人でアコースティックだと、内側に種火を点火して火を灯すみたいなイメージではあるかな。同じ音程で同じ熱量で同じ大きい声出すにしても、ちょっと違うかなと自分で歌ってて感じます。

 弾き語りってバンドみたいにがなると伝わらないことが多いんですよ。バンドではバンドっていう器があるから自分の声も伸びるけど。一人だと器の形が小さいんですよね。それに対して大盛りにすることだけが凄いことじゃなくて、自分の小さい世界でしっかりと作るのがいいのかなっていうのは凄くあって。バンドでは勢いとかスピードが求められるから、それをやってたら間に合わないんですよ。でも、フォークは自分のタイミングでできる。

 あと、歌う曲の選び方も変わりましたね。実際おじいちゃんとかおばあちゃんの前でザ・フォーク・クルセダーズの歌とか昔のフォークをやると喜んでもらえてたから、また聴き直したりして。そうすると歌えるかどうかっていう選択眼のところで聴きだす曲が出てきて。俺この前、ギターパンダが歌ってる「本当は何もないかもしれない」を歌ったんですよ。自分の子どもの卒業式の謝恩会で。

ーーもう歌ったんだ!

TOSHI-LOW:「お父さんお母さんたちは、君たちの未来を凄く考えている。だけれども……。本当は何もないかもしれない!」って言ってやったら子どもたちも喜んでくれて。こういうストレートな伝え方って凄くやりやすくて、誰の曲でもいいかもしれない。ギターパンダのこの曲もカバーなんですよ。

GUY:広島のサブカルシーンを牽引してるゴトウイズミちゃんていうアーティストがおって、アコーディオンの弾き語りなんよ。メロディは全く一緒なんだけど、それをこういう風に仕上げる山川君て天才じゃのうって思った。元曲もむちゃくちゃいいよ。女の人が歌ってるのと男が歌うのでも違うし。

ーーこのオムニバスによって派生する効果はあると思うんだけど。

TOSHI-LOW:まだほかにも入れたい人や断られた人もいて、今回これで形ができたんで「こんな感じだからもう一回入って欲しい」って説明してみたい。聴けば自分が思ってること云々じゃなくて、さっきの俺たちの遠藤ミチロウじゃないけど、自分も変わるタイミングで音楽的にもふくよかなものをもらえる気がする。みんなギャップがあるじゃないですか。だからってそれを売りにしてるわけじゃないし、この人たちのハードコアの一面はもちろんあるけど、人間として凄くふくよかでソフトな部分があるっていうものを伝えたくて、それがアコースティックだと出やすいから。

ーー確かにアコースティックをやり慣れてるBAKIさんとか中川さんとかにしてもバンド形態とは違うしよくわかるね。

TOSHI-LOW:それを読み取ったほうが、マニアックなファンになって意固地になるよりも、本当は面白くて豊かないい聴き方ができると思う。一面性だけでは押せない世の中になってて、もう世の中の色んなところで見られちゃってるじゃないですか。いくら強がっててもそうじゃない部分っていうのが見えてる中で、それが音楽で出るんだったら出してもらいたいなって。

ーー俺の先輩たちにも、ものすごく怖い人はたくさんいるんだけど、仲良くさせてもらってる人は仲間には優しいんだよね。本人たちは意識してないんだろうけど。

TOSHI-LOW:俺、ISHIYAさんの幼馴染の人と仲良くて、その人からISHIYAさんが昔から色んな文化や音楽を一緒に吸収してたっていう話を聞いてて、だからハードコアは怖い、一辺倒だって思ってた自分に、そうじゃないっていう視点ができて。その二面性みたいな部分って、俺たちが雑誌とか写真で見てるそういうものじゃないんだなぁっていうのを凄く思って。


ーーこのオムニバスをみんなが聴くことによって、どう伝わるかはデカいと思うんだよね。そうしたら第二弾って話にもなってくるとは思うけど。

TOSHI-LOW:もう第二弾のジャケットのイメージはあるんですよ。このジャケの人の仲間がちょっとずつ増えていくっていう(笑)。ドクロの数ももちろん一個ずつ増えてくし(笑)。

ーー配信とかはしないの?

TOSHI-LOW:これ配信しちゃうと1曲だけダウンロードとかになっちゃうんで。

ーーでも、これに入ってる面子のお客さんには配信文化の子たちもたくさんいるわけじゃん。そういう子たちには届かないと思うんだけど。多分CDプレーヤー持ってない子とかいるでしょ。パソコンとスマホだけで音楽を済ます人ってかなりいると思うから。

TOSHI-LOW:どうすればいいんですかね? そういう世代間のことを考えるのも凄く大事だと思っていて。

ーーそれが考えられているアルバムだとも思うからさ。

TOSHI-LOW:大事ですね。そこからの先って。

ーー最後に何か伝えたいことがあれば。

GUY:とりあえず2を出したい。まだまだみんなが知らないアーティストってゴロゴロいるんで、アルバムで彼らに触れてもらって最終的にはライブハウスに足を運んでもらいたいです。アコースティックって生で聴くのが一番いいから、そこに近づいてやばいものを観てしまったっていうのを感じて欲しい。ハードコアもそうだったんよ。そういう感覚を体験して欲しい。

 アコースティックって当たり前にある世界なんだけど、パンクのカテゴリーの中でアコースティックやってるやつって少ないと思うんで、パンクファンで実際に触れてる人って少ないでしょ。毛嫌いって言い方はよくないかもしれないけど「ああ、アコースティックね」とかって斜に構えずにガチッと受け止めて欲しいなと。自分はそれを伝えたいんで、聴いてない人は買ってください。

TOSHI-LOW:震災後気づいたこととか、意外に自分を止めてるものが自分の思い込みだったりすることがあって。個として自分が居たいために人を敵視してたこともあったんですけど、そうじゃなくて本当はちゃんと仲間を作るべきだとか、色んな自分の反省点がある。その中の一つで、自分も弾き語りをバカにしてたんだなっていう思いが凄くあって。そういう自分の反省の中で歳を取ってきて、そうじゃないほうが面白いっていうのを形にできて嬉しいんですけど、これからはもっと多様化してくると思う。俺がいちリスナーとして聴きたい「シンプルにギターと歌声のいいボーカルがここに乗ってくれたらいいな」「あなたの声が聴きたいんでやってください」っていうのをこれからも実現できたらいいなって思いますね。

(取材・文=ISHIYA)

V.A.『ACOUSTIC UNLAWFUL ASSEMBLY -アコースティック不法集会-』

■リリース情報
『ACOUSTIC UNLAWFUL ASSEMBLY -アコースティック不法集会-』
6月6日(水)発売
<参加アーティスト/収録曲>
1.遠藤ミチロウ/負け犬
作詞:遠藤ミチロウ 作曲:TAM

2.小河原良太/セキセイインコ
作詞作曲:小河原良太

3.NAOKI/愚か者の独り言
作詞作曲:NAOKI

4.Gotch/Wonderland
作詞作曲:Masafumi Gotoh

5.FUGU & JAM/タワー
作詞作曲:フグ

6.FUGU & JAM/SPEAK LIKE A CHILD
作詞作曲:フグ

7.FUGU & JAM/今すぐ銃を捨て街に出よう
作詞作曲:フグ

8.ワタナベマモル/ひみつ
作詞作曲:ワタナベマモル

9.柳家睦/希望の街
作詞作曲:柳家睦

10.八田ケンヂ/爆竹GIRL
作詞作曲:KENZI

11.ギターパンダ/本当は何もないのかもしれない
作詞作曲:ゴトウイズミ

12.中川敬/報道機関が優しく君を包む
作詞作曲:中川敬

13.骸 a.k.a. GUY/祝の島
作詞:骸 作曲:丸山裕

14.永山愛樹/カミサマ
作詞作曲:永山愛樹

15.BAKI/ジェロニモ
作詞:BAKI BABY 作曲:NAOKI(ex.LIP CREAM)

16.the LOW-ATUS/HAVE YOU EVER SEEN THE RAIN
作詞作曲:FOGERTY JOHN CAMERON
日本語詞:TOSHI-LOW

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