乃木坂46と生駒里奈は新たなステージへ 西廣智一が卒業コンサートに感じたこと

乃木坂46と生駒里奈は新たなステージへ

 乃木坂46の単独コンサート『乃木坂46 生駒里奈 卒業コンサート』が4月22日、東京・日本武道館で行われた。2016年12月以来となる今回の武道館公演は、今年1月にグループからの卒業を発表した生駒里奈にとって乃木坂46での最後の単独公演。1万2000人の動員に対して応募総数30万という、チケット倍率が30倍近くにおよぶ注目のステージに。これを受けて全国128館の映画館で実施されたライブビューイングには、約6万人を動員する結果となった。

 乃木坂46にとっても2018年最初の本格的なステージとなった今回の武道館公演だったが、まず会場に入るとステージの構成が比較的シンプルなものであることに驚かされた。スクリーンこそ至るところに用意されていたものの、これまでのような花道や段差のついたステージセットなどは一切なく、1期生から3期生までの全員が思いきり踊れるようなスペースが用意されていた。実はこのあたりに、生駒ならではのこだわりが表れているのではないかと推測する。

 「Overture」に続いてステージに登場した乃木坂46のメンバーは左右両サイドに陣取り、「乃木坂の詩」のサビをアカペラで歌唱。するとステージ中央後方から生駒がひとり歩き始め、ほかのメンバーと横並びになったところで最後の一節<僕らの詩>を生駒が笑顔で歌い、通常はライブの最後に披露される「乃木坂の詩」からライブをスタートさせた。今回のセットリストには生駒の意見が大きく反映されているそうだが、こういった曲順にも彼女の乃木坂46に対する熱い思いが感じられるようで、早くも胸をグッと締め付けられた。

 紫のペンライトで染め上げられた会場は、続く「おいでシャンプー」でパッと明るくなり、ステージ上も客席も笑顔に包まれる。さらに「太陽ノック」の冒頭では、生駒が「日本武道館、行くぞーっ!」と絶叫する場面も。すると、会場は早くもこの日最初のクライマックスと言える盛り上がりを見せ、場内の熱気が急上昇した。そして、仲間たちと3曲歌い通した生駒は、4曲目に自身唯一のソロ曲「水玉模様」を歌唱。緊張のせいもあってか、若干上ずった歌声だったが、生駒は最後まで堂々と歌いきった。

 最初のMCで生駒が彼女らしい言葉で感謝を述べると、続いてステージには3期生が登場し新曲「トキトキメキメキ」を披露。そこから2期生が「スカウトマン」、1期生が「Against」を次々に披露していく。期生ごとにパフォーマンスする構成は昨年7月の明治神宮野球場での単独ライブを彷彿とさせるが、それぞれの期ごとのカラーが明確に表れたパフォーマンスに、改めて乃木坂46の層の厚さを感じた者も多かったはずだ。特に1期生による「Against」では、冒頭に映像とリンクした生駒のソロダンスもフィーチャーされただけではなく、曲中のパフォーマンスも圧巻と呼べる迫力あるものだった。もともとダンスや表現力に定評のある彼女だが、卒業を前にそのレベルはさらに高みへと達したのではないかと感じさせられた瞬間だった。

 その思いは、続く最新シングル「シンクロニシティ」でも強く実感させられた。生駒を中心に展開されていく優雅で高潔さがにじみ出たパフォーマンスは、シングル20作目にして到達した乃木坂46のひとつのゴールなのかもしれない。それくらい、この曲のパフォーマンスからはメンバー全員から圧倒的なオーラが感じられた。また、曲の後半には選抜メンバー以外のメンバーも加わり、総勢42人による豪華で華麗なパフォーマンスが繰り広げられた。

 さまざまなメンバーが生駒との思い出話に花を咲かせたあとは、生駒にしかできないスペシャルなセットリストを用意。2014年から2015年にかけて兼任で活動したAKB48の楽曲を、乃木坂46の仲間たちと一緒に披露するというものだ。この演出が明かされると、会場からはどよめきの声が沸き起こった。そして生駒は、初めてAKB48チームBのメンバーとしてパフォーマンスした「初日」を、3期生とともに披露。続いて、劇場公演で渡辺麻友と一緒に歌唱していた「てもでもの涙」を、同じ秋田出身の鈴木絢音と歌い、最後は選抜総選挙で14位に選ばれた際の「皆さんにいただいた曲」である「心のプラカード」を2期生とともに歌い踊った。このメンバー選出にも生駒ならではのこだわりや、あとを託すメンバーへの熱い思いが感じられた。

 AKB48楽曲を歌い終えたあとのMCでは、現在休業中の北野日奈子がサプライズ出演。どうしても一緒に生駒を見送りたかったという北野は、「ここからライブに参加します」と告げ観客を大いに喜ばせた。また、「2期生は後輩というよりも戦友」という生駒の言葉に、堀未央奈が「生駒さんが培ったものを、私たちが引き継ぎます」と力強く宣言する場面もあった。

 そういえば、この日のライブでは幕間に、さまざまなスタッフや関係者からの生駒へのメッセージを、スクリーンに映し出す演出も用意。さらに、開演前や終演後にはファンから募った生駒へのメッセージも紹介され、いろんな人の考えるさまざまな生駒里奈像を垣間見ることができたのではないだろうか。

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