『乃木坂46 生駒里奈 卒業コンサート』レポート(その2)
乃木坂46と生駒里奈は新たなステージへ 西廣智一が卒業コンサートに感じたこと
アンコールでは、全員が生駒の顔がプリントされたライブTシャツを着用して、「走れ!Bicycle」「シャキイズム」を披露。「シャキイズム」ではこの日最初で最後のトロッコが用意され、生駒がアリーナを一周する。ここでは、PA席に座るスタッフから労いの言葉がボードを使って伝えられる場面もあり、改めて彼女がメンバーのみならずスタッフからも愛されていたことが伺えた。
2曲を終えると、再びステージにひとりになった生駒が今の思いと、そしてこれからの決意をファンに伝える。彼女は「人って何かを変えようとするのに、こんなにもパワーが要るんだなと学びました」と口にしたあと、「『卒業できる』ってすごいこと。これからの人生のほうが長いし、(乃木坂46での活動を)たった7年しかやっていないのに、卒業という機会をくれたのは本当にすごいことだと思いました。こんなに素敵なメンバーに送られることはないと思うし、こんなに素敵な人に囲まれての卒業ももうできないと思う」と卒業への思いを語った。さらに、「もっともっと険しい道を進みたい、登りたいと思った。こんなに充実していてすごい場所にいるのに、この世界に夢を持ってしまった。その先に続く夢を掴みたいと思ってしまった。だからこそ、メンバーには自分もいつかそうなったときに胸を張ってひとりで仕事ができるところを見せてあげたい」と本心を語り、「心の底から楽しんでいただけるようなエンターテイナーになりたい」とファンに向けて告げた。
そして10分近くにもおよぶスピーチを終えると、生田と星野から大きな花束を受け取った生駒が「最後はこの曲を、みんなで楽しく歌って終わりたいと思います!」と呼びかけ、デビューシングル「ぐるぐるカーテン」でライブを盛大に締めくくった。「超楽しかった!」と満面の笑みの生駒は、ステージの端から端まで走り、会場中の観客に向けて深々とお辞儀をしてステージをあとにした。
しかし、ライブはこのままでは終わらない。秋元康からのコメントに続いてダブルアンコールに現れた生駒は「私は自分のためには頑張れない。何かのためにしか頑張れないです。こんな私を、これからもよろしくお願いします!」と挨拶し、メンバーをステージに呼び入れて再度「君の名は希望」を歌唱。メンバーは用意したバラを1輪ずつ生駒に渡し、ラストではTシャツの背中に用意したメッセージを送る。このサプライズには生駒もこの日何度目かの涙を流したが、最後の最後は「本当に(乃木坂46に)入ってよかった。みんなに出会えてよかった」と満面の笑みで語り、約3時間にわたる卒業公演を終えた。
生駒らしい乃木坂46への思い、同期メンバーや後輩メンバーへの思いが随所から伝わってきたこの日のステージは、ほかの誰にも真似できない、生駒里奈だからこそなし得たものだった。「こんなに頼もしい後輩ができたんだ」とばかりに2期生や3期生と一緒に舞台に立ち、と同時に初期から苦楽をともにした1期生とは「乃木坂46の生駒里奈」としての完成型を提示する。そこにあったのは「乃木坂46の顔」としてグループを牽引し続けた生駒の姿ではなく、今の勢いにほかのメンバーを乗せようと後ろから支える屋台骨としての生駒の姿だった。しかし、その役目がなくともメンバーは日々進化を続け、どこに出しても恥ずかしくない存在にまで成長した。それがあったから、生駒は自分の将来をしっかり考えることができることになったのではないだろうか。
22歳という大学生が社会に出る節目のタイミングにグループ卒業を選んだことで、物語としての「生駒里奈 第1章:乃木坂46編」は幕を閉じ、これから第2章に突入する。生駒はこれから外の世界で、新たに見つけた険しい坂を登り続けることだろう。そこでは孤軍奮闘する彼女の姿を目にすることもあれば、かつての同志と交わる瞬間もあるかもしれない。まるで彼女が愛する少年マンガのように、今後もいろんな形で観る者を楽しませてくれるはずだ。
と同時に、生駒を送り出した乃木坂46も、白石や西野、生田、齋藤といった1期生や、堀を筆頭とする2期生、そして現在選抜メンバーとして活躍する大園桃子、久保史緒里、山下美月、与田祐希を中心とした3期生がグループ活躍の場をさらに拡大することだろう。過去最大のヒットとなりそうな20枚目のシングル『シンクロニシティ』を携えた乃木坂46の新たな物語は、まだ始まったばかり。ここからどんな景色を見せてくれるのか、早くも楽しみでならない。
■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。
■セットリスト
01. 乃木坂の詩
02. おいでシャンプー
03. 太陽ノック
04. 水玉模様
05. トキトキメキメキ
06. スカウトマン
07. Against
08. シンクロニシティ
09. 初日
10. てもでもの涙
11. 心のプラカード
12. ここじゃないどこか
13. 満月が消えた
14. あらかじめ語られるロマンス
15. 無口なライオン
16. 指望遠鏡
17. 月の大きさ
18. ハウス!
19. 君の名は希望
20. 悲しみの忘れ方
21. 制服のマネキン
En1. 走れ!Bicycle
En2. シャキイズム
En3. ぐるぐるカーテン
WEn1. 君の名は希望