三浦祐太朗、歌とライブから伝わった“家族”を大切に思う気持ち
音楽番組での名だたる歌手との共演、舞台・ドラマでの演技、5年間続けているラジオのパーソナリティ、休止中のロックバンドPeaky SALTのフロントマン……あらゆる環境に身を置き、抜きん出た歌唱力と声の魅力を活かした活動を行うソロシンガーソングライター、三浦祐太朗。彼のアーティストとしてのキャリアは実に10年に及ぶ。三浦は昨年、母、そして伝説の歌手・山口百恵の名曲を歌い継ぐということに初めて挑戦した。2017年7月にリリースした『I’m HOME』は山口百恵の人気曲の数々を収めたカバーアルバムである。
2018年3月20日名古屋から同作を携えてまわった東名阪ワンマンツアー『I’m HOME TOUR 2018』のファイナル公演、3月30日東京・Zepp DiverCity(TOKYO)では、『I’m HOME』収録曲はもちろん、彼の歌手としてのキャリアが詰め込まれた多彩な楽曲群が披露された。
筆者が三浦祐太朗のステージを生で体感したのは、この日が初めてだった。『I'm HOME』と同じく「さよならの向う側」から幕を開けたライブでもっとも強く印象に残っているのは、淀みがなく、まっすぐに突き抜けてくる歌声だ。音程も抜群に安定している。しかし、だからといってライブ感が損なわれているわけではない。自身のオリジナル曲「サナギ」や「曼珠沙華」のカバーといった激しいアレンジのナンバーでは、ライブならではの躍動や熱があり、バンド時代の楽曲「With」やソロデビューアルバム『AND YOU』収録の「月になって」では言葉の一つ一つがダイレクトに伝わってくるような感覚があった。
『I'm HOME』収録曲のアレンジは全曲、この日のステージでバンドマスターを務めた宮永治郎(Gt)が手がけている。「母のファンの方、僕の(曲)で初めて聴く方、どちらにも届くアレンジにしてくださった」と紹介があったように、「いい日旅立ち」「秋桜」「プレイバックpart2」「イミテイション・ゴールド」「謝肉祭」……それぞれの曲の持ち味が生かされたギター中心のアレンジが施されており、オリジナルとはまた違った新たな価値が見出されていた。
ステージ中央で肩幅ほど足を開き、堂々と歌う姿を見ていると、その立ち居振る舞いだけで彼のホームに招かれたような気分になる。三浦祐太朗のライブは全てを受け入れるような懐の深さと温かな雰囲気で満ちている。ツアーファイナルを自身の本拠地で行う場合、オーディエンスにむかって「ただいま」という言葉が投げかけられる場面をよく見かけるが、彼の場合は逆だ。「自分がただいまって言うのではなくて、みんなが僕の家族。ここにいるみんなが家に帰ってきたという感覚でお届けしたいので最初に言わせてください。おかえりなさい」。ライブ中のMCは比較的しっかり設けられており、会場に集まった“大切な家族”にむけて丁寧に語りかけられる。
バックバンドのギターの一人、石川恭平とはソロデビュー前からの付き合いで、2人で各地のフリーライブに300本以上出演してきたこと。自分たちのことを知らない人にむけて歌ってきた中、こうして自分たちの音楽を聞きに来てくれた人たちにむけて歌うことができる喜びを語り、ライブ終盤、ボルテージが最高潮に達した「グライダー」では会場の一体感を見て「ライブには素晴らしいパフォーマンスとお客さんが大事」と感慨深く語る。そして、三浦祐太朗を見守り続けるファンにむけ、“同じ歩幅で歩いてくれてありがとう”という気持ちをこめたという「THE WALK」を本編最後に披露。会場全員でアカペラで一節を歌う姿には、まさに一つの家族のような結束力が感じられた。