祭nine.が『HARE晴れカーニバル』で示したグループイメージ ボイメンよりも“和”の方向に?

参考:2018年4月2日付週間CDシングルランキング(2018年3月19日~2018年3月25日)

 最新の週間オリコンシングルランキングは祭nine.の『HARE晴れカーニバル』が1位を獲得した。

 祭nine.は名古屋を拠点に人気を拡大している7人組の男性グループで、今回の作品は2ndシングルとなる。前作のメジャーデビューシングル『嗚呼、夢神輿』は週間チャートで2位であったため、メジャー2作目の今作にして初の1位を記録した。非常に勢いを感じ取れるチャート結果だと言えるだろう。作詞はYUMIKO、作曲はムラマサヒロキ、編曲は中土智博がそれぞれ担当している。

祭nine.『HARE晴れカーニバル』パターンA(DVD付)

 イントロから<ハァーヤイサー そーりゃそーりゃ!…>と勢いよく始まり、「いろは歌」を取り入れた<色は匂へど 散りぬるを(Wo!)…>を思いっきり歌うなどとにかくアッパーに決めていく。単なるサビ始まりではなく、ハァーヤイサー部→「いろは歌」部→サビの一部分→そしてAメロ、と最初のAメロに至るまでに現場を盛り上げるための工夫がふんだんに凝らされている。序盤から会場に一体感や高揚感をもたらす強力な作りだ。

 Aメロはどこか演歌のような歌い上げるメロディで、そこに小気味良い<ソレソレソレ>や<は~どっこらしょ~>といった合いの手がテンポよく挿入される。曲の核となるサビ以外にもこうしたライブを意識したファンとの掛け合いを見据えた曲作りが垣間見え、全体を通して「お祭り感」を大事にしたハイテンション感で凝縮されている。

 彼らの兄貴分にあたるBOYS AND MENが学ラン風の衣装でヤンキー路線を確立しながらも「BOYMEN NINJA」や「YAMATO☆Dancing」などで取り入れた日本の伝統的なモチーフ、あるいは音頭の「合いの手」をJ-POPにおけるコール&レスポンスとして取り入れた音楽的な遊び心は、非常に印象に強くパワフルであった。弟分にあたるこの祭nine.はこれらの要素を抽出し、さらに”和”な方向に舵を切ったイメージをまとっている。演歌のイメージも強いテイチクエンタテイメント内のレーベルに所属している彼らだからこそ、そうした路線も多重な意味を持つのだろう。

 歌詞は終始縁起の良い言葉で溢れていて、<1富士 2鷹 3なすビ>や<春一番><千客万来><茶柱>などポジティブなワードをチョイスしている。そんな中、2番Bメロで<嵐にも立ち向かえ>というフレーズを登場させるなど、聴いてるこちら側も熱くなれるような細かい仕掛けがあったりする。

 グループイメージをしっかりと打ち出し、野心も覗かせ、勢いも感じさせる。今後の活躍を大いに期待できるリリースであった。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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