Ivy to Fraudulent Game、ワンマンライブで見せた所信表明 “静と動”が交錯する音楽世界へ
昨年12月にリリースした1stアルバム『回転する』でメジャーデビューを果たした、群馬発の4ピースバンド・Ivy to Fraudulent Game(以下、Ivy)。ポストロックやシューゲイザー、オルタナなど幅広い音楽性を取り入れたこのバンドの特徴は多いが、あえて二つ挙げるとするならば、福島由也(Dr)による文学的な歌詞を軸に、構築美を追求していく繊細な音作り、そして主にライブの場で見られる衝動的でヒリヒリとした存在感(その筆頭がフロントマンの寺口宣明/Gt&Vo)であろう。この“静と動”的な要素が、これまでは音源とライブとで棲み分けがされていたような印象があり、ゆえに両者の間にギャップが生じていたのが正直なところ。しかし、2月3日に赤坂BLITZで行われたこの日のライブには、いよいよそれらがゆるやかに混ざり始めたのでは? という感触があったのだ。
では、どのようなところからそう感じたのか、ということを一言で示すならば、“アレンジの交通整理がしっかりされていた”という点である。たとえばこの日の1曲目「dulcet」は、轟音で始まり轟音で終わるシューゲイザー・ベースの曲。こういうタイプの曲は全員で一心不乱に掻き鳴らして終了、となる危険性も少なくないのだが、鳴らすビートの種類を絞り、ダイナミクスによって場面を切り替えることにより、上物の動きをより鮮明に見せるようなアレンジになっていた。「夢想家」を経ての「!」では、曲が進むごとにBメロとサビの間が詰まっていく構成を活かしながら、アンサンブルの熱量をじわじわと上げていく。「E.G.B.A.」「trot」「Dear Fate,」はアッパーチューンで、それまでステージを食い入るように見ていた観客にもこの辺りから動きが生じるようになったが、この3曲も決して荒々しいわけではない。ギター&ベースのリフメインで進行していくなか、たとえばコードが特徴的な移り変わり方をするところでは全員一斉に4分で刻むなど、強調したいところを強調するための工夫を施しているようだった。
このように、聴かせたいフレーズ/見せたいプレイをより明確に打ち出していくような、意思の見える演奏になっていた印象だ。さらに「水泡」「青写真」などでは、キメに合わせて照明が切り替わる演出もあり、視覚的な効果も加えられていた。冒頭に書いた“静と動が混ざり合う”とはつまり、元来の曲構成、言い換えると、音源を制作する段階から培ってきた構築美が、バンドの本能的な部分を解放するための装置として、ライブでも正しく活かされていたということだ。それにより、曲に憑依されたかのように歌う寺口の佇まいも一層映えるように。