Beverly、桁外れの歌ヂカラで観客を圧倒 純粋な気持ちを届けた初のワンマンライブ

Beverly、初ワンマンレポ

 5月31日にリリースされたデビューアルバム『AWESOME』がたちまち5万枚を超えるヒットとなり、8月10日に幕張メッセで行なわれたアリアナ・グランデの来日公演ではサポートアクトとして鮮烈なパフォーマンスを披露。“今、最も勢いのある新時代の歌姫”と言われるフィリピン出身の実力派シンガー、Beverlyが、10月5日に渋谷WWWで初のワンマンライブを行なった。題して、『Beverly 1st JOURNEY「AWESOME」』。チケットはソールドアウトとなり、場内は開演前から「果たしてこの初ワンマンで彼女はどれほどの驚きを与えてくれるのか」と気持ちを昂らせて待つ大勢の観客たちの熱気が渦巻いていた。

 バックバンドの構成は、ギター、ベース、ドラム、キーボード×2、女性コーラス×2。重厚なサウンドのイントロダクションに続いて、純白の衣装に身を包んだBeverlyがステージに現れ、アルバム『AWESOME』のオープナーでもあった「Tell Me Baby」でライブがスタート。のっけから天まで届くようなハイトーンで観客たちを圧倒する。出し惜しみなし。自身の最大の武器は勿体ぶってとっておいたりせず、初めから解き放つ。それがBeverlyのやり方であり、揺るぎない自信もそこから感じとれる。曲の途中で早速、手拍子を要求し、歌い終わると「今夜はおもいきり楽しんでいきましょう!」とシャウトした。


 続いてアルバム2曲目の「Too Much」。ヒップホップR&B的なグルーヴにカラダごとノって歌うBeverlyのボーカルには、R&Bディーバ的な要素とポップ(あるいは歌謡)シンガー的な要素とがいいバランスで同居。その両方を持ち合わせているのが彼女の大きな魅力のひとつであることが、自分にはこの時点でもう理解できた。そして3曲目は、これもアルバムの曲順同様、「I need your love」。そう、連続ドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』の主題歌(オープニング曲)となり、その突き抜けるハイトーンでBeverlyというシンガーの存在を最初に世に知らしめた曲である。ミュージックビデオは500万回再生を超え、現段階では恐らく「もっとも知られているBeverlyの曲」であろうが、それをライブの後半ではなく序盤にもってくるあたりも、構成としてなかなか大胆。もっと圧倒できる曲、もっと揺さぶれる曲が、まだまだほかにもあるのだという、それもやはり自信なのだろう。

 こうして一気に3曲を歌い終えると、「ありがとうございます!」「わぁ~、すごい人。嬉し~」と、改めて大勢の観客たちを前にしていることの喜びを表現。「初のワンマン、『Beverly 1st JOURNEY「AWASOME」』にようこそ~~!!」と叫んだところで、観客のひとりから「Beverly!!」と声がかかると、丁寧にまた「ありがとうございます」と応える彼女だった。それから「このワンマンライブをやることになってから、ずっといろいろ考えてきました。ベッドのなかでも歌いながらイメージトレーニングをしてきました」と話し、このライブにかける意気込みも表明。さらに、a-nationに出演した際、足を怪我したことも告白し、「痛かった……。でも今日はもう大丈夫。Beverlyはストロングです!」と笑顔でガッツポーズをするあたりはなんともキュートな女の子といった感じで、圧倒的な歌唱とのいい意味でのギャップを印象付けもした。

 続いては、連続ドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』の挿入歌となった切ないミッドバラッド「Empty」。抑制した表現でAメロを歌い、サビで感情を強く前に押し出す。そのメリハリは見事なものだ。また、ブラコン(=ブラック・コンテンポラリー。1970年後半~80年代に流行した都会的な歌ものブラックミュージック)っぽい洗練の度合いが大人リスナーの耳と心をくすぐる英語詞曲「Dance in the Rain」では、高低差のあるメロディにも広い音域でなんなく対応しながら女性の微妙な気持ちを巧みに表現。因みにこの曲、作曲が鈴木雄大で、編曲は鶯巣詩郎。楽曲クオリティの高さはそのふたりの名前が示しているとも言えるし(知らないという若い人は自分で調べるべし!)、逆に言えばこういう大御所の作曲家や編曲家が曲を提供したくなるレベルの歌唱力をBeverlyが予め備えているということでもある。そして続いての英語詞曲「Nowhere to go...」でも彼女はハイトーンを駆使しながら、切ない感情を見事に表現した。

 ここでライブのタイトル、『Beverly 1st JOURNEY「AWESOME」』について、次のように説明するBeverly。「タイトルのジャーニーは旅の意味ですが、私にとって日本に行くこと、歌うこと、全部がジャーニーです。そのジャーニーの始まりはフィリピンでの活動でした」「フィリピンの有名な作曲家であるベニー・サトルノさんが私をサポートしてくれたんです。(ベニーさんに)本当に感謝しています」。そのベニー・サトルノ氏が実はこの日、フロアにいた。Beverlyはベニー氏を観客たちに紹介し、「私の先生みたいな人ですから、プレッシャーを感じますが、いつものBeverlyを見せたいと思います」と健気に話して、直接英語でベニー氏に感謝の気持ちを述べるのだった。また、「私のジャーニーは始まったばかりです。私の家族、エイベックスのみなさん、私のデビューを支えてくれた全ての人たちに最大のサンキューを贈りたいと思います」とも話し、続けて「そして観に来てくれたみなさん、本当に本当にありがとうございます。みなさんが私のファミリーです。私とこれからもジャーニーしてください。してくれますかぁ~~?!」。大きな声でそう呼びかけ、「ベニーさんが作ってくれた曲を歌います」と言って「今もあなたが…」という美しいメロディのバラードを歌唱。MISIAの初期バラードを想起させるところがこの曲にはあり、懐かしさと切なさが混ざり合いながらジワっと心に広がる感覚を自分は覚えた。

 続いてバロック調のイントロも印象的な90年代テイストの哀愁R&B曲「Unchain My Heart」を歌い終わると、ここでまた少し長めのMCタイム。「私は歌手になるためにフィリピンから来ました。私は特別じゃなく、どこにでもいる普通の子です。フィリピンには歌の上手い人がたくさんいるんです。そのなかから私を選んでもらえたことは、自分でも信じられません。でも選んでもらえたからには全力で頑張ります」と、これからに向けての気持ちを表明した。が、それだけでは終わらずこんなふうにも。「でも私の問題は日本語です。日本語、ちょっと難しいです。前はみなさんの話していることが全然わかりませんでした。それで日本語学校に行ったり、テレビをたくさん見たりしたけど、一番大切なのは人とコミュニケーションをとることです。だからみなさん、私を見かけたらどんどん話しかけてください!」。確かにまだほんの少しだけ彼女の日本語にはたどたどしいところもあるけれど、懸命にそうやって思いを伝えようとする姿勢はむしろ誰もが好感を持つはずだし、それは素直さとか誠実さという言葉に換言することもできるもの。彼女は「もうひとつの問題は、日本の食べ物が美味しいことです。日本のコンビニには美味しいものがありすぎて、お腹がすいてなくてもつい行ってしまいますね」なんてことも話して笑いを誘い、観客のひとりが「好きな食べ物は?」と問うと、「豆腐麺! ヘルシーでおすすめですよ」と即答するのだった。こんななんてことのないやり取りでステージの上と下との壁を完全に取り払い、あたたかで柔らかな空気を自然に生み出せるのは、間違いなく彼女の人柄であって、それはこれからのライブにも大いに生きてくることだろう。そう、Beverlyはどんなに大きな会場で歌うようになっても、こうした観客とのコミュニケーションを絶対に忘れることなく、自然と場をひとつにすることができる。それがわかった一場面だった。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる