“セールス”と“話題性”の乖離をどう捉えるか? 最新複合チャートに見る音楽シーンの現状

ラジオチャートの意義

 最後に、ラジオ部門に注目したい。もともとラジオ部門は、セールスや話題性と一線を画した「独立した動き」を見せることが多い。例えば、以前記事を書いた6月12日付のチャートでは、AKB48やTWICEがセールスでも話題性でも席巻しているなか、ラジオ部門ではNulbarich「It’s Who We Are」が1位を獲得していた(総合では37位であった)。当然、放送局ごとのパワープレイなどが影響しているパターンもあるにせよ、パーソナリティの好みの選曲も少なからず介在しているこのランキングは、「人に聴かせたい」「オススメの一曲」が集計されている。

 今週のラジオチャートでも、あいみょん「君はロックを聴かない」が5週連続でトップ10入り(総合は55位)、PAELLAS「Shooting Star」が18位(総合圏外)など、セールスや話題性に依存するわけではない、けれども”旬”である楽曲がチャート上位に出現するのが、この部門の特性だ。

 そんななか、ラジオ部門で13位と健闘したのがRHYMESTER「Future Is Born feat. mabanua」である(リリース直前のため総合は圏外)。YouTubeで公開されているMVを見ると、曲を遮って宇多丸がこう言う。

「YouTubeで聴いてもらうのはいいんだけど、一応商品だからさ、ファンだったら……買って! 商品をね。これ観てる皆さんもね……ひとつ、よろしくお願いします」

 この言葉が、奇しくも今週のチャートから見えてきた「曲が売れること」と「話題性」のある種の乖離現象を物語っているようで、面白くもあり、悲しくもあった。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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