星野源「Family Song」、複合チャートでも納得の結果 “最先端のJ-POP”生み出す流儀とは?

【参照:ビルボードジャパン  チャート・インサイト(2017年8月28日付)

 8月28日付の「Billboard Japan Hot 100」、総合チャート第1位は星野源「Family Song」。2位はDAOKO×米津玄師「打上花火」、3位は祭nine「嗚呼、夢神輿」、4位は乃木坂46「逃げ水」、5位はDISH//「僕たちがやりました」という並びになった。

星野源『Family Song』

 星野源「Family Song」は、セールス、ラジオ、ルックアップ(PCによるCD読取数)の3部門で1位。人気・影響力ともにトップの座を走る彼の久々の新曲だけに、納得の結果と言っていいだろう。

 以前に当サイトで森朋之氏、杉山仁氏との座談会を行った際にも触れたが(参考:2017年上半期チャートに見るJ-POPの現状とは? 有識者3人の座談会)、2017年上半期最大のヒット曲は、やはり星野源の「恋」だった。2016年後半の代表曲となったこの曲は、「Billboard Japan Hot 100」の2017年上半期チャートでも2位以下に大差をつけ首位。そして単なるセールスの数字を超えた重要なポイントは、間違いなく今の日本の音楽シーンの“ヘゲモニー”を握っているのが彼であるということ。「わかりやすいこと」よりも「誰も見たことのないもの」のほうが結果的に大衆性を獲得するのが往々にしてポップミュージックの最前線で起こる現象なのだが、2015年のアルバム『YELLOW DANCER』で「イエローミュージック」というテーゼを打ち立て「恋」でその先に駆け抜けた星野源は、まさにそれを体現する存在だった。

 というわけで、いわばリリースされる前にヒットが約束された新作である『Famlily Song』。おそらくプレッシャーも大きかっただろう。が、星野源は再び「誰も見たことのないもの」を作ってくれた感が大きい。ミドルテンポの腰を落としたグルーヴを持つこの曲。ベースになっているのは、星野源本人のコメントにもある通り、1960年代末から1970年代初頭のソウルミュージックだ。ただ、単なるノスタルジーではなく、それを2017年の最先端のJ-POPとして成立させる絶妙な手さばきを見せている。BPMは83。バラードとして捉えられがちなテンポではあるが、細かく練られたリズム、ベースやギター、ストリングスがメロディに絶妙に絡むアレンジメントの力で“ノリ”を生み出している。

 当サイトの高橋芳朗氏によるインタビューでとても興味深かったのは、この曲はクラッシュシンバルやライドシンバルを使ってないということ。それがソウルミュージックのテイストにつながるということだ。「あのなかにシンバルを入れると途端に普通のJ-POPになるんです」と言っていたので、絶妙なバランスなのだろう。また、ヴィンテージエフェクトの効果に頼っていないというのもポイントだと言う。そういうサウンドのニュアンスにとても力が入っている。現行の海外のヒップホップやR&Bの動きともリンクしているし、一曲に込められた参照軸がとても多い。

 シングルは、カップリングに収録されている「肌」「プリン」、そして毎回お馴染みの宅録シリーズである「KIDS(House ver.)」も含め、ちゃんと4曲で一つの作品性を伝えるパッケージングにもなっている。さらに初回限定盤DVD『Home Video』の内容も『YELLOW PACIFIC』のライブ映像、「プリン」レコーディングドキュメンタリーと1時間30分近くの内容。副音声も含めて楽しみどころを詰め込んでいるのも星野源の流儀で、オンラインで音楽を聴くことが主流になりつつある今の時代に「盤」を手に入れるプレミア感をちゃんと作っているのも流石だと思う。

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