Mr.ChildrenがJ-POPシーンに君臨する理由ーー「himawari」にみる“バンドの凄み”

参考:2017年7月24日~2017年7月30日のCDシングル週間ランキング(2017年8月7日付)

 2017年8月7日付の週間CDシングルランキングの1位は、Mr.Childrenの『himawari』。今回この楽曲を聴いて、メジャーデビュー25周年を迎えたMr.Childrenの凄味を改めて感じることになりました。

Mr.Children『himawari』

 25周年の第1弾シングルとして1月にリリースされた『ヒカリノアトリエ』に続く第2弾シングル表題曲が「himawari」。映画『君の膵臓をたべたい』の主題歌です。

 「himawari」では、冒頭からMr.Childrenのバンドサウンドをストリングスの音色が包んでいます。ストリングスを担当しているのは、元G-クレフのバイオリニストである落合徹也が率いる弦一徹ストリングス。

 そして、Mr.Childrenの演奏は随所でリズムのタメがきいているのですが、そうしたタメが歌詞と連動していることには少なからず驚きました。

 「himawari」では、一番でも二番でもAメロの歌詞がいきなり強烈なインパクトをもたらします。たとえば一番は、<優しさの死に化粧で/ 笑ってるように見せてる>という衝撃的なフレーズで始まるのです。そして、一番も二番も、Aメロの歌詞は「死」を連想させます。

 サビの歌詞では、さりげなく、しかし鮮やかに韻を踏んでいます。たとえば一番では<暗がりで咲いてるひまわり/ 嵐が去ったあとの陽だまり>と。

 そして後半では、<諦めること/ 妥協すること/ 誰かにあわせて生きること/ 考えてる風でいて/ 実はそんなに深く考えていやしないこと>と、聴き手の胸に刺さる言葉がたたみかけるように歌われていきます。「himawari」で桜井和寿というソングライターの真骨頂が発揮されていると感じるのは、ラブソングとしての普遍性があるのと同時に、聴き手に突き刺さる鋭利さも込められているからです。

 ここでは歌詞への言及が長くなりましたが、歌詞、メロディ、そしてボーカルとサウンドが、渦を巻いているかのようであるのも「himawari」の特徴です。歌詞の言葉は重いのですが、前述したような押韻によって、聴覚上の心地良さもあわせもっています。つまり、普通なら同居するのが難しいはずのものが、ここでは同居しているのです。

 「himawari」は6分近くもあるのに、めくるめくように展開していき、驚きに包まれているうちに終わってしまいます。歌詞とメロディとサウンドの有機的な結合ぶりは、この連載で聴いてきたJ-POPのメインストリームの楽曲群の中でも突出したもの。そこに、Mr.Childrenが長年に渡りJ-POPシーンに君臨してきた理由があるとも感じました。凄いものを聴いた。それが最初に「himawari」を聴き終えた瞬間の率直な感想です。

 Mr.Childrenがメジャーデビュー25周年を迎えて、なお1位を獲得できる理由は何か? その一端を体感させる楽曲が「himawari」なのです。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

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