アーティストが語る“ミュージックヒストリー” 第十回:Mrs. GREEN APPLE

Mrs. GREEN APPLEのクレバーな音楽性はいかにして作られた? 大森&藤澤が語る“ルーツ”

 隔週木曜日の20時~21時にInterFM897でオンエアされているラジオ番組『KKBOX presents 897 Selectors』(以下、『897 Selectors』)。一夜限りのゲストが登場し、その人の音楽のバックボーンや、100年後にも受け継いでいきたい音楽を紹介する同番組では、ゲストがセレクションし、放送した楽曲をプレイリスト化。定額制音楽サービスKKBOXでも試聴できるという、ラジオと音楽ストリーミングサービスの新たな関係を提示していく。8月31日の放送には、Mrs. GREEN APPLEから大森元貴(Vo&G)と藤澤涼架(Key)が登場。“自身が影響を受けた音楽”と“100年後に残したい音楽”を紹介する。今回はそのプレイリストから彼らの音楽性を掘り下げるべく、同回の収録現場に立ち会った模様の一部をレポートしたい。

Mrs. GREEN APPLE・大森元貴(Vo&G)

 大森がまず、自身のルーツとして挙げたのは、The Vamps「I Found A Girl ft. Omi」(アルバム『Wake Up』収録)。

The Vamps「I Found A Girl ft. Omi」

Mrs. GREEN APPLEとも同世代であり、世界的に活躍する若手バンドの楽曲を挙げた理由について、大森は「メンバーと移動車の中でもガンガン聴いています。80年代のサウンドも取り入れながら新しく聴こえるようにしていて、すごく感化されたんです」と語っているが、まさにチープとも言えるシンセサイザーのサウンドを取り入れながら、ストレートでポップなサウンドを鳴らすという意味では、Mrs. GREEN APPLEとも近い感覚があるといえる。大森自身も、「感覚が新しくて、自分たちと近い感じで音楽を届けていて、それがいいなって思うんです」と、シンパシーを感じているようだった。

Mrs. GREEN APPLE・藤澤涼架(Key)

 続けて、藤澤はUVERworldの「Just break the limit!」(アルバム『AwakEVE』収録)を紹介。

UVERworld「Just break the limit!」

 藤澤は「高校卒業のタイミングで芸能の養成所に入ったんですけど、小さい頃から歌って踊れる人に憧れがあったんです。中学で吹奏楽、高校でクラシックを勉強したけど、どこか引きずっていて」と、音楽の勉強もしながら、歌い踊ることへの憧れが捨てられなかったという。そんなときに「Just break the limit!」に出会い、「TAKUYA∞さんがピアノを18歳や19歳のころにやろうとして失敗したけど、再び始めたことが今の作曲にも繋がっていると歌っていて、僕もいまから始めても遅くないのかなと思うようになった」そうだ。

 そんな藤澤は、「音楽を始めてから影響を与えられた曲」としてJamiroquaiの「Runaway」(アルバム『HIGH TIMES』収録)をピックアップ。

Jamiroquai「Runaway」

「自分はクラシックやフルートをやっていたんですけど、すごく緊張しいで、ガチガチになることが多かったんです。でも、バンドという形態でありながら、ジェイ・ケイが歌い踊るのを見て、そういう『型』にはまらなくていいんだ、自由に音楽を楽しんでいいんだと思った」と、自身の楽器や規定に縛られず自由に音楽を楽しむことの大事さを学び、彼のパフォーマンスの特徴である、キーボードを弾いたり時折前にでて観客を煽るというスタイルが確立する元となったのだという。

 次に、同じテーマで大森が選んだのはMaroon5「Misery」(アルバム『Hands All Over』収録)。

Maroon5「Misery」

 大森は同曲について「ボーカルであるアダム・レヴィーンの歌がとにかくうまい。僕自身、あまり人の曲を聞くタイプじゃなかったんですけど、Maroon5はずっと聴いている」と語る。Mrs. GREEN APPLEの楽曲のすべてを手掛ける大森だが、彼は他のメンバーに比べ、自身の音楽ルーツや趣味趣向について明言することは少ないが、先のThe Vampsにせよ、今回のMaroon5にせよ、彼らの音楽性と照らし合わせることで見えてくるものが多い。後者に関しては、大森とアダムの声が質こそ違えどどちらもハイトーンで伸びやかなことなども共通点といえるだろう。なお、番組ではほかにも、彼らの“100年後に残したい音楽”や、8月30日リリースシングル『WanteD! WanteD!』についてのトークも行われた。

 音源を軽く一聴しただけだとJ-POPライクなバンドのようにも聴こえるMrs. GREEN APPLE。しかし、今回の放送を通して、実際は洋楽のスタンダードなポップスやロックにルーツを持つ、アカデミックでクレバーな集団であることが少しでもわかれば幸いだ。

(文=中村拓海)

■番組情報
KKBOX presents『897 Selectors』
DJ:野村雅夫 
放送日:毎月第一・第三週木曜20:00からInterFM897でオンエア
次回ゲスト:Mrs. GREEN APPLE 大森元貴(Vo&G)&藤澤涼架(Key)(8月31日放送)
番組ホームページ

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