F-BLOODが結成20周年に響かせる“ポップなロックンロール” タイムレスな魅力と活動に迫る

参考:2017年6月19日~2017年6月25日のCDアルバム週間ランキング(2017年7月3日付・ORICON)

 1位にAcid Black Cherry、2位にA.B.C-Zと奇しくも「ABC」のワンツーフィニッシュとなった今回のチャート。8位には1997年にリリースされたRadioheadの名盤『OK COMPUTER』の20周年記念盤『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』がランクインしており、自分がリアルタイムで聴いていた作品がこの手の「○○周年盤」といった歴史的アイテムとして取り扱われていることに時代の流れを感じる。

 9位のMR.BIGも含めて何とも言えない懐かしさの漂う今週のチャートの「90年代感」を決定的なものにしているのが、4位にランクインしたF-BLOOD『POP ‘N’ ROLL』。元チェッカーズの藤井フミヤ・尚之兄弟による今年結成20周年を迎えるユニットで、オリジナルアルバムとしては1998年の『F-BLOOD』、2008年の『Ants』に次ぐ3作目となる。前作『Ants』の最高位が16位だったことを考えると、今作の4位という結果は(他作品との兼ね合いもあるとはいえ)非常に幸先の良いものと言える。

F-BLOOD『POP'N'ROLL』

 全曲の作詞をフミヤ、作曲を尚之、そして編曲を↑THE HIGH-LOWS↓のメンバーでもあった大島賢治が担当した今作で鳴っているのは、タイトル通りのポップなロックンロール。無骨なギターのリフにムーディーなサックスが絡む「ROCK BAR」、夏空が似合うアッパーな「Want Chu」というロック色の強い楽曲で幕を開けるこのアルバムは、コーラスワークがおしゃれなポップソング「未来列車」やフミヤの色っぽいボーカルが堪能できるバラード「Full moon night」、「ギザギザハートの子守唄」「ジュリアに傷心」あたりのチェッカーズ楽曲を彷彿とさせる「孤独のブラックダイヤモンド」など多様な表情を見せる。「四つ打ちが」「シティポップが」といったシーンの狂騒とは一線を画するラフなムードのバンドサウンドからは、日本のポップミュージックのうねりの中を渡り歩いてきた彼らならではの貫禄を感じる。

 前回の当連載にて「90年代の音楽シーンについての言説はここ1年くらいで非常に増えた印象があるが、(中略)「ど真ん中の90年代」について語られることが実は少ない」という話をしたが、F-BLOODの2人はまさに「ど真ん中の90年代」の文化を担っていた重要人物でもある。有吉弘行が所属していたお笑いコンビである猿岩石のヒット曲「白い雲のように」は今作の楽曲と同じくフミヤの作詞と尚之の作曲によって生み出されたものであり、フミヤのソロデビュー曲「TRUE LOVE」も200万枚を越えるセールスを叩き出している。また、彼らが在籍していたチェッカーズの立ち振る舞いは昨今たびたび話題になる「アイドルかアーティストか」論を先取りしている部分も多い。「歌謡曲の時代」から「Jポップの時代」へ移行するタイミングにおいて最前線で活動していた彼らが、2017年になってもフレッシュな活動を続けられているというのはとても喜ばしいことである。

 本日7月1日放送の『THE MUSIC DAY 願いが叶う夏』(日本テレビ)や8月の『RISING SUN ROCK FESTIVAL』など、この夏にはチェッカーズの活動期には生まれていなかったような若いリスナーの目に触れる場所にも出演するF-BLOOD。タイムレスな魅力を放つ彼らの音楽がどのように受容されるか注目したい。

■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題に。2013年春にQUICK JAPANへパスピエ『フィーバー』のディスクレビューを寄稿、以降は外部媒体での発信も行っている。

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