『タカイトコロ』リリースインタビュー
西野カナや東京女子流の楽曲提供でも話題 佐伯ユウスケが目指す“オーセンティックな音楽”
「一時期、佐伯=バラード作家、というイメージが付いていました」
ーー佐伯ユウスケさんというミュージシャンを強く意識するようになったのは、東京女子流の「Regret.」(2ndアルバム『Limited addiction』収録)の作曲者としてなんです。“黒さ”と“メロウ”さ、ガールズポップスの融合がたまらない! と思っていまして。
佐伯:ありがとうございます! あれは松井寛さんのアレンジのおかげですけどね(笑)。
ーーここからは作家・佐伯youthKとしての姿について伺いたいと思います。佐伯さんの作る楽曲は、R&Bがベースにありつつも、ただトレースするだけでなく噛み砕いて非常にポップなサウンドをクリエイトしています。意識して、ブラックミュージックを土台にしたサウンドを作ろう、と思われているのでしょうか?
佐伯:マセてた時期はそうだったんですけど、数を重ねていくうちに段々と身に染みついていったと言いますか、意識してブラックミュージック的にしようと思わずとも、スッと滲み出るようになってきたんです。ちなみに「Regret.」は、僕が最初に作った曲なんですよ。
ーーどういったきっかけで誕生したのですか?
佐伯:高校を卒業してから2年間、音楽の専門学校に通っているなかで誕生しました。元々はシンガーソングライター一本で活動していきたかったんですけど、それだけじゃこの世界で食べていくのは難しいというのを徐々に知り、同時に作家として権利を作って行かなきゃ生きていけないということも学んで(笑)。そこで曲を書いて完成したのが「Regret.」で、当時は「やめてよ」というタイトルでした(笑)。この頃ちょうど山下達郎さんを聴いていたので、シティ・ポップっぽいアレンジだったのを覚えています。
ーー他にその頃聴いていた音楽は?
佐伯:流行モノならなんでも。他にはLoop Junctionをよく聴いていました。
ーー現cro-magnon、現ペトロールズの三浦淳悟さんが所属していたHIPHOPバンドですね。
佐伯:元々HIPHOPが好きだったのもあって。中でも一番好きなのはRHYMESTERです。やっぱりブラックミュージックでも、オーガニック寄りのサウンドを作るミュージシャンが洋邦問わず好きだったんですよね。一応高校の頃に、ダンスをやっていて、その頃ダンス用にP-Funkのようなドファンクも聴いていましたけど、あくまでダンス用に掘っていただけなので、そこまで素養にはなってないような……。
ーーダンス用の曲が例え素養にはならずとも、ダンス“自体”は音作りに反映されているような気がします。ビート感が独特と言いますか。
佐伯:それはあると思います。踊りながら歌う曲は“音ハメ”が重要になってくるので、ダンサンブルな曲を作る場合は、踊りやすさを意識して言葉と音を当てはめて……と言ってこれも強く意識しているわけじゃなく、自分の身体に染みついたものが自然と滲み出ただけだと思います。
ーー自らの身体に染みつかせるために、普段から音楽を聴いて血肉にされたりはしてますか?
佐伯:それを全くしない人なんですよ。新人の頃は「ザ・ビートルズだけは聴いておけ!」「流行モノは抑えるんだ!」と色々な方に言われましたけど、どうも興味がないと音楽を聴けない体質でして(笑)。まず、勉学的に音楽を掘るということがイヤなので、古い新しい関係なくその時々で自分に入ってくる音楽を聴いて咀嚼することはたくさんあります。そういえば知り合いですけど、NakamuraEmiさんはスゲーなぁ! と衝撃を受けています。彼女とは同郷で、彼女が働いていたスタジオに僕がリハに入った時に知り合いまして。もう、彼女の歌詞は彼女にしか書けない世界じゃないですか。だから聴いていると食らっちゃうし、サウンドも自分がやりたいことを完全に出し切っていて、もうリスペクトと羨ましさが入り混じっています。僕は影響を受けやすいから、Emiちゃんに確実に引っ張られちゃうのであまり沢山は聴けないです(笑)。
ーー(笑)。歌詞作りに関しても伺います。佐伯さんの歌詞は、「タカイトコロ」でも十分に発揮されていますが、押韻がキーポイントのように感じます。それはHIPHOP好きな部分がやはり大きいのでしょうか。
佐伯:韻を踏むことを大前提に歌詞を書いて、スッと耳に入ってきやすくすることを意識しています。その言葉の持つ“キャッチーさ”というのを、自分が曲を提供してきたことでつかむようになりました。例えばカナちゃんの「君って」は、サビで「君って」という言葉をリフレインすることで耳にも残るし、「君って」に続く「しないんだよね」というフレーズでは、「え」で脚韻を踏んでいて。ふと耳に入ってきて時に、伝わりやすく覚えやすい。韻を踏むというのは、自分のマナーなんだなぁと最近改めて思います。
ーー思い入れが深い曲はなんでしょう?
佐伯:敬愛するMummy-D(Rhymester)さんと共同で作った(入野)自由の「トップランナー」という曲は、一つの夢が叶った瞬間で、すごく緊張しました(笑)。あとは西野カナさんの「君って」は一つの転換点になりました。この曲がヒットしたおかげで、佐伯youthKのことを知っていただき、依頼が来るようになりましたので。まぁ、発注のほとんどが「『君って』みたいな曲で」と言われるようにもなりましたがね(苦笑)。
ーー業界の悪いところですね(苦笑)。
佐伯:僕としても「いやぁ、『君って』はあの1曲しかないんで、作れないなぁ」と、届いた!という気持ちの反面、そればかりは…という思いがありまして(笑)。ただ、「君って」以降はバラードでの発注が増えて、佐伯youthK=バラード作家、というイメージが一時期ついたのは事実です。