吉祥寺は音楽をどう愛してきた? 映画『PARKS パークス』サントラが伝える“匂い”
そのほかサントラには、大友良英、NRQといった、ジャズをベースにしながらジャンルを越境するアーティストも参加。吉祥寺はジャズの街でもあることを思い出させてくれる。また、主題歌の相対性理論「弁天様はスピリチュア」は、解体される直前のバウスシアターでレコーディングした曲がもとになっていて、現在は井の頭公園の100周年記念放送として、毎日、園内放送で流れている。映画の主題歌であると同時に、井の頭公園のテーマ曲でもあるのだ。
本作に集結したアーティストたちはそれぞれに個性豊かだが、共通する匂いがあるとすれば、過去の音楽としっかりと繋がっていて、都会的なモダンさとローカルなアットホームさが、ほどよく混ざり合っているところだろう。それは都心からの距離感とも関係しているのかもしれない。公園をそぞろ歩くように、吉祥寺の音楽シーンを垣間みることができる『PARKS パークス』のサントラ。このアルバムをガイドブックがわりに、吉祥寺のレコードショップやライブハウスを訪ねてみるのもいいかもしれない。そうすれば、吉祥寺という街がいかに音楽を愛し、音楽に愛されているかが伝わってくるはずだ。
■村尾泰郎
ロック/映画ライター。『ミュージック・マガジン』『CDジャーナル』『CULÉL』『OCEANS』などで音楽や映画について執筆中。『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』『はじまりのうた』『アメリカン・ハッスル』など映画パンフレットにも寄稿。監修を手掛けた書籍に『USオルタナティヴ・ロック 1978-1999』(シンコーミュージック)などがある。