中森明夫が語る、“アイドル入門本”に託した思い「僕の使命はアイドルの未来に賭けること」

中森明夫、“アイドル入門本”に託した思い

アイドルがアイドルをプロデュースする時代に

ーー今、中森さんが注目しているアイドルは?

中森:表紙のイラストを描いてもらった、ベボガ!(虹のコンキスタドール黄組)のぺろりん先生こと鹿目凛ですね。彼女は現役アイドルであると同時にイラストレーターやマンガ家でもあるんですね。ある意味、批評家でもあると思う。要は現在進行形でアイドルをやりながらルポタージュもやってるわけでしょう? すごい面白いな、こういう人が現れたんだなって思いましたよ。あと、HKT48とSTU48の劇場支配人を務める指原莉乃が『TIF』(『TOKYO IDOL FESTIVAL 2017』)のチェアマン(応援団長)になりましたよね。秋元康、小室哲哉、つんく♂と並んで代々木アニメーション学院のプロデューサーに就任し、そこで「声優アイドル」のプロデュースをすることも発表している。アイドルがアイドルをプロデュースする時代になったんですよ。これはさっきのアイドル部の話とも繋がっている。アイドルがアイドルを進化させる未来を、ぺろりん先生や指原莉乃は予感させますね。すごいことですよ。

ーー中森さんは何故そこまでアイドルに惹かれ続けてるんでしょうか?

中森:人は生まれる時代を選べない。堀川正美が「時代は感受性に運命をもたらす」(「新鮮で苦しみおおい日々」より)と書いている詩があります。70年代に思春期だった自分がアイドルを見たことが、自分の感受性に決定的な影響を与えてしまったんです。それと、結婚してないし子供もいないというのも大きいんじゃないかな。「アイドルは好きになってもらう仕事」と言いましたが、僕の仕事は誰よりも早くアイドルを好きになることなんですね。もし子供がいたら、子供が一番大事になって、愛情がそっちに向かっていたんじゃないか? だから、ある意味、この本は僕の“遺書”ですよ。僕はもう50代後半だし、これからそう長くは生きないでしょう。妻も子供もいないから、たった一人で死んでいく。でも、僕が死んだ後にもこの本は読まれ、必ず読者の中から次々とアイドルが生まれる。僕の“魂”はそんな未来のアイドルたちと共にずっと生き続ける。この世界とアイドルシーンが続く限り、永遠に……。今まで書いた本の中で一番いい。前作の『寂しさの力』を書いたときもそう思ったんだけど(笑)。ただ前作は何かを終えた気がしたけど、この本では何かが始まる予感がして、本当にワクワクしています。

(取材・文=岡島紳士)

■書籍情報
アイドルになりたい!』(ちくまプリまー新書)
著者:中森明夫
出版社:筑摩書房

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