SMAP解散報道、マスメディアと世論の差はなぜ生じた? 中森明夫氏に聞く
8月14日未明以降、世間を大きく騒がせているSMAP解散報道。連日飛び交う情報に疑問や不信感を抱くファンは少なくない。今回の発表に関しては、新聞各紙の報じ方をはじめ、普段のマスメディアの動きとは異なる不可解な部分が多くあるからだ。世間が報道に抱く違和感はどこから生じているのか。解散に関する情報をいち早くキャッチしていたアイドル評論家の中森明夫氏に、今回の騒動についての話を聞いた。
「13日夜20時くらいにあるWebサイトに『SMAP解散』の記事が出たのがはじまりです。他を調べてもその情報はどこにも出ていなかったので、知り合いのマスコミ関係者に確認したところ、明日解散発表が出るということはその人も知っていました。さらにある1人から電話がかかってきて、翌日スポーツ新聞6紙、全部1面に出ると。その後も何人か芸能マスコミの方ともやりとりして、情報が事実であることがわかりましたが、なかには泣き声で『いま分かってることをファンに伝えられないのが悔しい』と言っている関係者もいましたね」
中森氏は翌日のスポーツ紙を見て、さらに驚いたという。各紙がほぼ全て同じ内容を1面で掲載していたのだ。「あれには、いささか呆れました」と当日の様子を振り返る。
「もちろん事務所サイドからネタをもらわなければ、あの記事は作れなかったと思います。ただ、リオオリンピックの真っ最中、その日にメダルをとっている候補もいるなか、同じ内容の記事が1面で掲載された。もちろんSMAPだから1社も落とすわけにいかなかったという逆説的な意味もあるかもしれないけれど、あれは異様な光景でした。そしてそこに掲載されたメンバーのコメントは、いつどういう形で出てきたものか分からない、極端なことを言うと本当に言ってるのかどうかも分からないもの。28年も活動してきた、あれだけ大きな存在のグループがそれだけで終わってしまうのは、それはみんな納得がいかないでしょう」
突然の解散発表は、なぜこのタイミングとなったのだろうか。中森氏は週刊誌や出版メディアが休みだったお盆中の出来事であることが大きく関与していると語る。
「お盆休みを取っていた女性誌の編集長は前日夜にSMAP解散の事実を知らなくて驚いてましたね。新聞とTVによる報道だけという状況をつくることを狙ったのではないか。新聞やTVでは、SMAPやジャニーズアイドルに関してはいわゆる御用記事ばかりで、まっとうな批評がこれまで成立していない。もちろん現場の人たちがみんなそれでいいと思ってるわけではないですが、個人が思っていても何も言えない状態でここまできてしまったんです。しかし、いまは昔とちがってインターネットがあるため、新聞とTVだけで世論の誘導はできない。アイドルにとってもファンにとっても、いまの状態は幸福ではないでしょう」
中森氏は、SMAPの解散報道で多くのファンが抱いたメディアに対する不信感が、今後のアイドル文化全体に影響することを危惧しているという。
「それぞれのメディアに特性があり、良い意味での緊張感は互いにあってよいと思いますが、マスメディアとインターネットメディアの温度感がこれほどかけ離れてしまうのはSMAP、ファン、芸能マスコミ、アイドル文化にとって良いことではない。僕は男性アイドルが専門ではありませんが、広い意味でいうとアイドル文化を愛していますし、アイドルのムーブメントが衰退したり終わってしまうことへの危惧が人一倍ある。SMAPの解散は残念ですが、それなりの事情もあると思うので仕方ないことでもあると思います。しかしファンが納得できないかたちで終わってしまうことが、日本のアイドル文化が衰退したり危機的なものになっていく、一つの大きなきっかけになってしまうことを恐れています」
また中森氏は、これまでの芸能マスコミと芸能の関係性を「一種のプロレスのようだ」と指摘する。
「僕もライターを30数年やってますから、芸能界とマスコミの世界はある程度持ちつ持たれつがあるのはわかります。それでも程がある。時には厳しくすべきだし、実際にはある特定の人、力を持たない小さな事務所の芸能人などにはめちゃくちゃ厳しい現実もある。これだけ報道を疑問視する声があがっている状態では、いずれ芸能マスコミ全てが信用されなくなりますよ。メンバー自身の声、騒動の真相、本当のことを知りたがる人に対して届けられないのは異様な事態。天皇陛下ですらご自分の肉声で思いを伝えてるわけじゃないですか。メンバー間の関係性ばかりが取り上げられ、事務所のことがほとんど出てこないのも不思議です。事務所の社長・副社長、退社したマネージャーにも焦点が当てられない。本来の芸能マスコミであれば、メリー喜多川氏やジャニー喜多川氏に直接取材するはずが、それも全くないですからね」