SHIROSE(WHITE JAM)× ジョーブログ対談 動画で1000万PV、二人が考える表現の可能性
現代において人々の生活を大きく変えたものーー。そう考えたとき、多くの人はインターネットをその筆頭に挙げることだろう。現在ではエンターテインメントの分野でもネット発の人気アーティストやスターが続々と誕生し、16年に大阪府内の小学校が「4年生男子の将来の夢」を調査したところ、第3位にYouTuberがランクインしたことも話題となった。
では、そんな現在においてエンターテインメントの形はどう変わったのだろう? 今回は昨年「咲かないで」が卒業ソングの新定番曲として注目され、黒板アートを用いたMVが話題を呼んだWHITE JAMのSHIROSE(Vo)と、あらゆるジャンルの体当たり動画をアップロードするYouTubeの人気チャンネル「ジョーブログ」を運営するジョーの対談を通して、現代ならではのエンターテインメントの形と、そこに込めた2人の思いを聞いた。(杉山仁)
「人と共有できる」ことに楽しさを感じた(ジョー)
ーーSHIROSEさんとジョーさんは、それぞれ形は違っても、アーティスト/表現者であることは共通していると思います。そもそも、2人がエンターテインメントに興味を持ったのにはどんなきっかけがあったんですか?
SHIROSE:僕は19歳の頃ですね。もともとスポーツをやっていて、それを辞めたタイミングで音楽をはじめたんですよ。当時の僕はスポーツをしていく中で感じたことを日記にしていたんですけど、スポーツの道を諦めたときに、それを書く意味がなくなってしまって。じゃあ「この書いたものを歌詞にしてみたい」と思って曲を作り始めたのが最初でした。
ジョー:僕は本当に子供の頃ですね。小さい頃公園で遊んでいて、鬼ごっこに飽きたりしたら「次は何をしたら楽しいかな?」と考えたりしていて。あと、僕はよく学校に遅刻していたんですけど、一度めちゃくちゃ朝早くに教室に行って、近くの商店街で大量に買ったゴキブリの模型をばらまいてから、一度家に帰っていつものように遅刻して学校に向かったりもしていました(笑)。そうすると、「誰がやったんや!」って結構な騒ぎになったりとか。
ーー自分が楽しむために、遊びを作っていくのがエンターテインメントの原体験だった、と。
ジョー:そういうイタズラ的な要素がすごく大きかったんだと思います。YouTubeにアップロードしている動画もただ遊んでいる感覚なんですよ。それをどこにもアップロードすることなくやっていたら、知り合いに「YouTubeに上げてみたら?」と言われて、そうしたらすごく反響があって。でもそのとき、「人と共有できる」ことに楽しさを感じたんだと思います。自分も楽しいし、人も喜んでくれる。それでハマっていったんですよ。でも、YouTubeに動画をアップロードする前は、路上で寄付を募ってバーをはじめて、リアルな場所でイベントを沢山やっていました。もともとはイベンター的な感覚で、「100人で鬼ごっこをしよう」とか、「クリスマスに体にイルミネーションをつけて、サンタの恰好をして街を練り歩こう」とか、そんなことをしていました。
ーージョーさんはその後、無一文でアメリカを横断する「アメリカ0円横断」シリーズなど、様々な動画コンテンツをYouTubeに投稿していますね。たとえばあの旅で、一番大変だったことはどんなことだったんでしょう?
ジョー:無一文からのスタートだったんで、お金がない中でどう生きていくか、どうやって生きる術を作りだしていくか、ということが一番大変だったと思います。路上で『NARUTO -ナルト-』の恰好をしてパフォーマンスをしたりとか……色んなことをしました。海外はチップ文化があるので、サービスや行為に対してお金が発生する感覚が日本以上にあって、「遊び」といういい意味でのクレイジーなことに対価を払ってくれる。本当は出来ないけど、(生きるために)やるしかないというか。言語も分からない中でも生きていくしかなかったんですよ。
ーーSHIROSEさんも海外に行かれることは多いんですよね?
SHIROSE:そうですね。もう随分前ですけど、Myspaceが全盛だった8~9年前に、海外の音楽作家の人たちと音楽キャンプを開いて、50人ぐらいで集まって曲を作ったりしていて。それがきっかけで向こうに行くことはよくありました。今はそういう場所が日本にも沢山ありますけど、当時は全然なかったんです。新しい作り方をしたいと思ったんですよ。
ジョー:50人全員で作詞から何からすべてを作っていくんですか?
SHIROSE:チーム分けをするんです。たとえば、1日目は12チームで12曲作る。それを6泊7日ぐらいで続けていく形ですね。色んな国の人たちが集まっているので、そうすると国によってできる音楽が違うんですよ。「とある国はお祭りのために音楽がある」、「また別の国は歌詞や曲というよりフレーズという概念しかない」とか、そういう違いがすごく楽しくて。そうやって色々な国の音楽に触れてみて、日本の音楽は一番変わっていると感じました。AメロやBメロという概念があるのって日本だけじゃないですか? だから、AメロからBメロに移行したときに「何で次の曲に行くんだ?」と言われたりもして。
ジョー:なるほど、面白いですね。
SHIROSE:中にはそれが受け入れられない人たちもいるんですよ。ファンクならファンク、ジャズならジャズ、ポップスならポップスでマナーが違って、色んな音楽をミックスするのはご法度とする人たちもいるし。それで「僕たちはこの後ベリーグッドセッションがあるけど、お前はもう帰れ」って言われたりもしましたね。せっかく向かったスウェーデンで、ひとりで立ちすくんだこともあって……。そのときに、J-POPみたいな日本の音楽って、個性が強いものなんだなと感じました。だからこそ、逆に色んな要素をミックスできる音楽でもあると思うんです。そういうことに今、世界中の作家が気づきはじめていますよね。
ジョー:自分自身も海外に行って日本との違いは感じますけど、僕の場合は「日本はご飯がめちゃくちゃ美味い」とか「空港が綺麗だ」とか、そんな感じで(笑)。あとは、日本ってきっちりとしている反面、マニュアルが整い過ぎてラフな部分が少ないですよね。僕がYouTubeを通してやっているのは、その「ラフな部分」なのかもしれないです。