SCREEN mode 雅友が語る、自身の音楽観とアニソンの未来「アーティスト発信で変えていきたい」

スクモ雅友が語る音楽観とアニソンの未来

 SCREEN modeが、2月22日、コンセプト2ndミニアルバム『SOUL』をリリースした。同作は、これまで数々のアニメ主題歌を手がけてきたSCREEN modeにとってアニソンを含まない意欲作。先日、その作品におけるインタビュー(「SCREEN modeが語る、新たな季節の始まり “アニソンなし”で見せた表現の奥行き」)を掲載したが、今回改めてSCREEN modeのサウンドプロデューサー太田雅友にインタビューを行った。今作をリリースするに至った経緯から、これまであまり語られなかった雅友の音楽ルーツ、現在の音楽シーンとブラックミュージックの関わり、ライブに対する姿勢など、アニソンの未来だけでなく、自身の音楽観についてもじっくり話を聞くことができた。(編集部)

「アニメにひもづく音楽しか作ってないとアーティストとしての強度が低くなってしまう」

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雅友

——新作はこれまでと毛色の違う作品になりました。まずはどんな思いでアルバム制作に向かったんですか?

雅友:僕たちのようなアニソンを作っているアーティストはアニメ作品にひもづいて音楽を作っていますが、去年の年末に年間オリコンランキングのアニソンチャートではキャラソンが上位に入り、アニソンアーティストが苦戦しているという報道があったんです。どうしてそうなったのか? と考えたときに、アニメにひもづく音楽しか作ってないとアーティストとしての強度が低くなってしまうと考えたんです。自分たちの音楽性をその都度アニメ作品に寄せて書いていかないといけないので。

ーーアニメ作品ありきになりますし、匿名性も高くなりますし。

雅友:そう。それにアニメにおもねるアーティストになっちゃうと、それはそれでアニメに失礼だなと思ったんです。アーティストとしてもちゃんとやってて、アニメ作品と対等な関係だからこそシナジーが生まれると思って。それこそRADWIMPSの「前前前世」があって映画の『君の名は。』はさらに素晴らしい作品になってると思うから。そのためには、1回、タイアップに頼らず作ってみよう。そこでちゃんと表現できるアーティストになる必要があるだろうと思ったんです。

ーーお題ありきではなく、作り手発信で音楽を作っていこうと。

雅友:そう。はっきり言っちゃえば、マーケティングせずに作ろうと。

ーーそこで今回の作品に『SOUL』と名付けた理由は?

雅友:2つ理由があって。音楽的な部分で「じゃあ、何をやる?」と考えたときに、今までやってきたロック以外がいいんじゃないかと。ボーカルの勇-YOU-が学生時代にソウルやR&Bを歌ってたんですが、アニメソングだとなかなかそのテイストをやれる機会がないんですね。じゃあ、そのルーツを辿っていこう。そうして作品に深みを出そうと思ったんです。

ーーもうひとつの理由は?

雅友:今の僕らは、アーティストとしてのSCREEN modeを知ってほしいとか、曲を聴いてほしいとか、そういう気持ちが強いんですね。僕らが置かれている現状を考えると、それがいちばん言いたいことだと。とはいえ、それじゃ歌にならないから、それを恋愛に置き換えて、片思いの男の歌のようにしていこうと思ったんです。

ーーなかなか気持ちが伝わらなくてもどかしい、みたいな。

雅友:そうです。全然振り向いてもらえない、だけど、すごく熱い男みたいな。それを裏テーマに歌詞を書いていったら一本芯が通って、尚且つ、本当の意味で作り物じゃないものができるんじゃないかと。

ーー本当の気持ち、心の内を歌ってますよという意味での「SOUL」なんですね。

雅友:そうです。作ってるときは「非モテの西野カナで」って言ってたんですけど(笑)。

ーー先程、勇-YOU-さんは学生時代にソウルやR&Bを歌っていたというお話が出ましたが、雅友さんのルーツミュージックはどんなものになるんですか?

雅友:音楽へのめざめという意味で、中学生の頃に好きだったのはBARBEE BOYSです。そこかEpic Records周りのREBECCAとか岡村靖幸さんとかを聴いていって、中学の途中くらいからB’zを好きになって。当時、松本(孝弘)さんが好きな洋楽を流すラジオ番組をやっていて、そこでいろんな洋楽に触れ、趣味が変わっていったんです。

ーーハードロック系に?

雅友:そうです。Deep PurpleとかLed Zeppelinとか(エリック・)クラプトンとか。

ーー雅友さんもそのタイミングでなにか楽器を手にするんですか?

雅友:その頃、友達にアコースティックギターをもらって。だから松本さんのラジオを聴いている頃は特にエレキを弾いてなかったんですけど(笑)。

ーーバンド活動はいつからですか?

雅友:高校時代は本当趣味程度で、大学に入ってからサークルに入ってやり始めました。いろいろやってましたけど、一番長くやってたのはメタルですね。超常現象について歌うメタルバンドをやってました(笑)。『ムー』とかを読みながら歌詞をみんなで考えるっていう(笑)。

ーーバンドでは「A」という音楽ジャンルをやるけど、家では「B」という音楽ジャンルを聴くっていう人もいますよね。

雅友:そのタイプでしたね。バンドはメタルなんですけど、個人的には大学の頃はORIGINAL LOVEが好きでメッチャ聴いてました。その流れでJamiroquaiとか。

ーーそこでソウルやR&B、アシッドジャズが出てくるんですね。

雅友:一方で、僕はアコギを弾いてたんで、あるラジオ番組で知ったスーパー・ギター・トリオのアル・ディ・メオラがすごく好きになって。その時期の彼はWorld Sinfoniaっていうユニットも組んで、ワールドミュージックをアコギでやってたんですね。それも聴いたり、その流れでチック・コリアとかもよく聴いてました。

ーージャズ/フュージョン系も聴くようになったと。

雅友:だから、ソウル系は大学くらいからなんです。オリラブの元ネタをディグって聴いていく、みたいな。

ーーでは、ソウル音楽で好きなアーティストを3組挙げると?

雅友:誰だろうなぁ。カーティス・メイフィールドとか、あとはサム・クックとか。あと、これはソウルに入るかわからないけど、トム・ジョーンズとか。いわゆるレア・グルーヴ系のソウルアーティストはあまり好きじゃなくて。歌がしっかりあるモノが好きでしたね。

ーーでは、ファンクで好きなアーティストとなると?

雅友:ファンクとなると……FunkadelicとかEarth, Wind & Fireとか。ジェームス・ブラウンも聴きますし。Graham Central Stationとか含めていいなら、そっち系も聴きますね。

ーー幅広いですね。

雅友:音楽をやるためにはあらゆる音楽を知っていなければならぬ、みたいな不安に苛まれてた時期が若い頃にあって。たとえば中学生の頃はThe Beatlesがあまり好きじゃなかったんです。でも『ギター・マガジン』とか『Player』とかを読んでると、いろんなアーティストがThe Beatlesが最高だと言ってる。自分は音楽をやりたいのにThe Beatlesの良さがわからないのは最悪だと思って、1カ月以上、毎日The Beatlesだけをウォークマンで聴いてた時期があるんです。

ーー強制的に体に入れていこうと。

雅友:そしたらだんだん好きになってきたんですよ(笑)。初期の頃のThe Beatlesってハーモニーがギリギリっていうかピッチが際どいんですよ。そういうところがあまり好きじゃなかったんですけど、だんだん、それも味だなと思うようになってきて。そういう体験があるから、いろんなモノの良いところを探して聴くようになって、それでさらに幅広い音楽を聴くようになっていったんだと思います。例えばDragon Ashが出てきたときは、全然ギター小僧だったのに急にサンプラーを買ってみたりとか(笑)。

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