TUBEは“日本の夏”を更新し続けるーー28回目の横スタライブで見せた熱と色気
本編最後のMCでは、「今日は久しぶりに歌えることの喜びを噛みしめながら、楽しいステージができました」と、前田から観客に感謝の言葉が伝えられた。そして披露されたのは、昨年12月、冬のシングルとして発表された「灯台」。<生きた証>としてこれまでの道のりを振り返る壮大なバラードが胸に迫る。野外ライブ恒例の噴水による演出が、涼やかさとともに感動を増幅させた。
アンコールではさらに爆発的な盛り上がりを見せ、お待ちかねの「あー夏休み」には、台風とともに過ぎ去ろうとする夏の襟元をグッとつかみ、目の前に引き寄せるような、否応のないパワーがあった。1990年の楽曲だが、四半世紀を過ぎても変わらない魅力がこの曲にはある。同時に、TUBEが生み出した夏のアンセムは、「夏休み」とは言えなかなか浮かれて過ごすのも難しいご時勢だからこそ、単純な“懐かしさ”とは違う意味での郷愁を伴い、また違った輝きを放っているように思えた。
ラストには花火が打ち上がり、まさに大団円。しかし、声援は鳴り止むことがなく、ダブルアンコールとして92年リリースの名曲「夏だね」を披露。その後、前田が「パイプラインという名前で、今はなき横浜シェルガーデンというアマチュアのステージに立ったのが最初でした。その感動は、今も忘れません。そして今は、その何倍も多くの人に聴いてもらえるバンドになりました」と感慨深く語り、最後は「海のバラード」を熱唱。海を見て日々のさまざまな思いを洗い流し、フラットな気持ちで明日に向かう――そんなメッセージに観客は聴き入った。
夏という季節――そのイメージを構成する重要な概念は、「熱」と「色気」ではないだろうか。それをネガティブに捉えれば、夏は“うだるような暑さや、妖しく不純な誘いに満ちた季節”にもなるが、TUBEが感じさせてくれる夏は、より輝かしいものだ。つまり、あくまで前向きに発せられる「熱」と、明るく艶やかな「色気」を絶妙なバランスで併せ持つバンドだからこそ、数多くのアーティストが夏曲をリリースしてきたなかでも、TUBEは日本の夏を象徴する存在になったのだろう。
夏という季節に飽きることがないように、TUBEの音楽も夏がくるたびに、新しい気持ちで聴くことができる。「手術前よりいい声が出るようになった」と胸を張った前田の歌声に耳を傾けながら、“夏はまだまだTUBEのものだ”と確信するライブだった。
(文=橋川良寛)
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