“シティポップ”とは異なるもう一つのムーブメントーーNOT WONK、CAR10、ドミコの台頭を追う

ドミコ

 2011年に埼玉・川越で結成されたドミコは、ボーカル・ギターとドラムの2ピース・バンドだ。小編成であるが故のタメの効いたグルーブを練り上げるスタイルで、地元を中心に東京や大阪でもライブを行っており、今年4月にはスペインのガールズ・ガレージ・バンドHiNDSの来日公演で共演したことでも話題を呼んだ。また、10月には同じく埼玉出身のTempalayと共に、出演者に同世代の仲間だけを集めたイベントを開催し、その翌月には初のフルアルバムを発売する。

 ポストパンクやガレージロック、エレクトロポップなどの要素を取り入れ、ローファイなサイケデリアを生み出すドミコ。日本語の意味に捕らわれない、脈絡のない言葉を並べた歌詞が、英語に聞こえるようなでたらめな節回しで歌われ、さらに唐突にギターが加速したり転調したりする。

 そのサウンド・メイキングの奔放さは、00年代までに日本のロックバンドが築き上げてきたフォーマットやセオリーから解放されている、という証でもある。ドミコはあらかじめ何の文脈にも捕らわれていない。好きなものを好きなように組み合わせて再構築し、自分が最高だと思う音を並べて、鳴らして、歌えばいい。そのありのままのアティテュードが、2016年になるにふさわしい、自由なロックを生んでいる。

ドミコ「プライマリケア」

 上記の3バンドは、今はインディシーンのメインカルチャーど真ん中にいるわけではない。しかし、新しいセンスを共有することで、ローカルなつながりが合流し、ゆるやかな共同体が生まれはじめている。それを活性化させているのは、本稿でも触れた<KiliKiliVilla>をはじめとした全国各地で立ち上げられている独自のカラーを持ったインディレーベルやレコード店の存在、あるいはネット、SNSの普及に理由があるだろう。極めて近しい価値観と音楽性を持ったバンドが各地で同時に誕生するようになったのは、音楽カルチャーが、かつて“渋谷系”、“下北系”と呼ばれた音楽が発信された都市だけではなく、あらゆる場所/空間から派生するようになった、ということの象徴である。さらに、こうしたバンドは、ドメスティックに独自の進化を遂げるのではなく、US/UKインディのスタイルやトレンドを取り入れながらも、グローバルな音楽シーンの背景にある時代の空気と共振することで自分たちの本音を鳴らしているところが興味深い。この渦が大きくなり、新しいムーブメントが沸き起こることを、大いに期待したいと思う。

(文=若田悠希)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる