マカロニえんぴつ、『hope』ツアーリベンジに持ち寄った思い 5年の月日を物語る厚みも深みも増したアンサンブル

マカえん『hope』ツアーリベンジ公演レポ

 ステージに浮かぶ「hope」の文字を背に登場したメンバー4人とサポートドラマー・高浦''suzzy''充孝。スポットライトに照らされたはっとりがギターをかき鳴らして「ボーイズ・ミーツ・ワールド」を歌い出した。分厚いバンドサウンドが会場を震わせる。「東京!」というはっとり(Vo)のシャウトに大歓声が湧き起こり、その声はやがて大合唱へと展開していった。今やアリーナクラスの会場でライブをすることも日常となったマカロニえんぴつがライブハウスに立つとこんなにも強烈な迫力を生み出すのか。田辺由明(Gt)のギターソロも長谷川大喜(Key)のキーボードのフレーズも高らかに響き渡る鮮やかなオープニングだ。

マカロニえんぴつライブ写真(撮影=酒井ダイスケ)
はっとり
マカロニえんぴつライブ写真(撮影=酒井ダイスケ)
田辺由明
マカロニえんぴつライブ写真(撮影=酒井ダイスケ)
高野賢也
マカロニえんぴつライブ写真(撮影=酒井ダイスケ)
長谷川大喜

 続けてミラーボールが回るなかで披露されたグルーヴィな「レモンパイ」。長谷川と高野賢也(Ba)が体を揺らしながら奏でる力強いリズムにオーディエンスの熱も上がる一方。はっとりの「元気だねえ!」という言葉が端的にフロアの盛り上がりを言い表している。田辺のリフからスタートした「遠心」でははっとりがオーディエンスに歌を預ける光景も生まれ、Zepp DiverCityはこれ以上ない一体感に包まれていった。

 「お待たせしました、マカロニえんぴつです!」。「愛のレンタル」まで4曲を終えてはっとりがフロアに話しかける。「土日もいいけど、平日の労働から解き放たれた解放感、好きかもしれない」という言葉に長谷川も「みんないい顔してる」と応じる。「一緒に遊びに来ました!」と呼びかけて歓声を浴びつつ気合十分の表情で「2日目、やっちゃうぞ!」と叫ぶと、オーディエンスから「無理すんなよ!」との声が飛ぶが、「無理させてもらいますよ」とさらに情熱を溢れ返らせるはっとり。何しろ2ndフルアルバム『hope』を携えたこのツアーは、2020年にコロナ禍で開催中止となったもの。5年越しの「リベンジ」なのだ。「何をしててもここ(頭の片隅)に残ってましたから」という言葉が物語るとおり、バンドにとっても、もちろんファンにとっても待ちに待った夜。バンドの演奏はますますいきいきと躍動し、オーディエンスも全力で応えていくのだった。

マカロニえんぴつライブ写真(撮影=酒井ダイスケ)

 そんなMCに続いて披露されるのは、マカロニえんぴつの歴史を語る上で欠かせない名曲「恋人ごっこ」。『hope』が出た当時とは比べものにならないほど厚みも深みも増したアンサンブルが、5年という年月を物語るように響き渡る。切なさよりもそれを乗り越えていく強さが上回っていくような2025年の「恋人ごっこ」は、まさにマカロニえんぴつの進化の証明だった。ここで昨年リリースされた4th EP『ぼくらの涙なら空に埋めよう』からの「poole」の〈暗い話を笑ってするため、/ボクらは歪んだり直し合ったりする〉という歌詞が、まるで後日談のように届けられる。長谷川の鍵盤も田辺のギターも衝動そのもののように暴れ回るなか、そこから繋げて1stフルアルバム『ハッピーエンドへの期待は』収録曲「裸の旅人」へ。もちろん『hope』の楽曲が中心のツアーではあるが、あのアルバムと現在のマカロニえんぴつを自由に行き来するようなセットリストは、現在進行形でバンドのグルーヴを更新し続けているバンドからの力強いメッセージだ。

マカロニえんぴつライブ写真(撮影=酒井ダイスケ)

 ドラマティックな「ブルーベリー・ナイツ」を経て、ここでバンドメンバーがいったん退場、ステージにははっとりだけが残される。アコースティックギターを爪弾きながら「弾き語りをちょっとやってみようと思います」と言って歌い始めたのは「たしかなことは」。音源ではバンドアレンジだったこの曲が新鮮な表情で響いてくる。続けて「あなたはきっと歌を聴くのも好きであれば、歌うことも好きな人だと勝手に思ってるけど、この歌をどこかで歌うときは、嘘なきように、嘘なきように」と「嘘なき」を披露。真摯なその歌声にオーディエンスが息を呑むようにして聴き入る姿が印象的だった。そして戻ってきたメンバーとともに「ヤングアダルト」が始まっていく。はっとりが弾き語りからそのまま弾いているアコギの音色のせいもあるのか、これまで何度も音源で、ライブで聴いてきた曲だが、『hope』の曲たちが次々と演奏されていくこのツアーで聴く「ヤングアダルト」はなんだかひときわ頼もしく、あたたかく、まさに“hope”そのもののように響いてきた。

マカロニえんぴつライブ写真(撮影=酒井ダイスケ)

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