堺正章とRockon Social Clubが織りなす“現代的GSサウンド”の面白さ ミニアルバム『プンスカピン!』レビュー

堺正章 & RSC『プンスカピン!』レビュー

 堺正章 & Rockon Social Clubによるミニアルバム『プンスカピン!』がリリースされた。

 60~70年代のグループサウンズ(GS)を代表するザ・スパイダースのボーカルであり、現在も日本を代表するエンターテイナーとして活躍している堺正章。そして、元男闘呼組のメンバーに寺岡呼人、青山英樹を加えたRockon Social Club。本作は60年代と80年代の二つのバンドブームを繋ぎつつ、現代へと継承する作品だ。

 このプロジェクトが始動したのは、昨年9月に行われたRockon Social Clubの『ROCKON SOCIAL CLUB RELOADED TOUR 2024 SUMMER OF LOVE』日本武道館公演の直後。起点となったのは、先行配信された楽曲「プンスカピン!」だ。NARITA THOMAS SIMPSON(成田昭次、寺岡呼人、青山英樹)の昨年のクリスマスライブ(横浜BUNTAI)で堺正章とともにサプライズ披露されたこの曲のテーマは、GSの現代的解釈だろう。

 まずは曲名。「プンスカピン!」というタイトルには、「フリフリ」「バン・バン・バン」(ザ・スパイダーズ)などと同様、発声したときの楽しさと覚えやすさを兼ね備えた曲名はきわめてキャッチー。Aメロ、Bメロのコーラス、さらにサビでもこのワードが連呼され、一度聴いただけで記憶に残るハッピーな中毒性に結びつけている。

 60年代の(主にイギリスの)ロックを想起させるバンドサウンドも鮮烈だ。軸になっているのは冒頭で炸裂するギターリフ。シンプルかつ豪快なギターのフレーズに“タメ”を効かせたリズム隊が加わり、ゴーゴーダンス/モンキーダンスにぴったりのグルーヴを生み出している。さらにゴダイゴのメンバーとしても有名なミッキー吉野の演奏によるオルガンも大きなポイント。GSムーブメントのなかでも特に音楽的評価が高いザ・ゴールデン・カップスのメンバーだったミッキー吉野による、渋さときらびやかさを同時に感じさせるプレイは流石のひと言だ。そして特筆すべきはやはり、堺正章のボーカル。ノリの良さと軽やかさ、リズムを捉える技術と発声の良さ、そして、〈「もう、怒っちゃうぞ」〉〈「もう、笑っちゃうぞ」〉という決め台詞(?)のコミカルなカッコよさを含め、シンガーとしての魅力を改めて実感することができた。

 GSの根本にあったのは、60年代の洋楽を日本語のバンド音楽に置き換えるという行為だったと言っていい。そのスタンスは今現在に至るまで、日本のポップスやロックの基盤となっている。その20年後、80年代のバンドブームの最中にキャリアをスタートさせたRockon Social Clubの中心メンバーたちが堺正章とタッグを組むことは、この国の音楽シーンの流れを再認識できる効果もあるはずだ。

堺正章&Rockon Social Club「プンスカピン!」Music Video

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