ハードコアパンクバンド・DEATH SIDE、熱狂のNY公演をボーカルISHIYAがセルフレポート

DEATH SIDE NY公演をレポート

 ニューヨークという街は、マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクスなどの区にわかれており、今回滞在した場所は、ブルックリンにほど近いクイーンズという区だった。ブルックリンをドライブしながら、地元の人間しかわからないベーグル店やバーなどに行き、そろそろほかのメンバーも到着するかと思い確認してみると、夜9時以降の到着のようだ。それをAndyに告げると「今夜はMDCのライブとANTHRAXのライブもあるが、どちらかに行くか?」と聞かれたので、「MDCに行く!」と即答した。

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MDCヴォーカルのDAVE DICTORと筆者、弁慶。

 MDCというバンドは、1980年にはすでに活動していた、アメリカを代表するハードコアパンクバンドだ。未だ来日しておらず、筆者がどうしても観たいバンドのひとつだった。そのMDCが観れるなんて、なんと素晴らしいニューヨークの始まりだろう。会場に到着すると、ちょうどMDCが始まるころで、ステージの後ろにはMDCの旗が飾られ、メンバーがセッティングの最中。弁慶はフィンランドのプンタラフェスティバルというイベントで、MDCと共演したことがあるらしく、その時も素晴らしかったと言っている。わくわくしながら待っていると、ヴォーカルのDave Dictorが登場して観客に話し始める。ライブが始まると名曲のオンパレード! Andyも「Welcome N.Y.C」と嬉しそうだ。このクラブでのパンクバンドのライブを観て欲しかったようだ。

 MDCがライブを行ったブルックリンの「THE GRAND VICTORY」というクラブは、古くから活動するパンクバンドがニューヨークを訪れた際にライブをする老舗クラブらしく、PETER AND THE TEST TUBE BABIESやTHE AVENGERSなども、この4月にライブを行なったという。

 ライブが終わるとMDCのメンバーなどと歓談し、ほかのDEATH SIDEのメンバーも到着している時間なので、合流場所であるクラブに向かうのかと思いきや、Andy行きつけのバーをハシゴすることに。プエルトリコバーではプエルトリカンのおばちゃんと踊らされた。こうした場所は、普通の観光や単独の旅行ではなかなか行けるものではない。Andyが連れていってくれるバーは、本当に地元の人間だけが集まるようなところばかりで、非常にリアルなニューヨーク・ブルックリンを堪能できた。こういった経験ができるのもバンドでツアーに行く醍醐味である。

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クラブがオープンしたときの様子。

 そうしてやっと合流場所であるクラブTHE ACHERONに到着すると、DEATH SIDEのメンバーや鉄アレイとも合流し、ニューヨークでの再会を祝した。

 このTHE ACHERONというクラブは、マンハッタンにあったCBGB’SやKNITTING FACTORYといったパンクバンド御用達のクラブが閉店や移店したために、いわゆるアンダーグラウンドハードコアシーンでアメリカツアーをするバンドなどが、ニューヨークでライブをする場所になっているようだ。事実筆者のバンド・FORWARDが2014年にニューヨークを訪れた際にも、THE ACHERONでライブを行った。今回の鉄アレイのアメリカツアーの最終日もここで行うそうである。バーが併設されているが、そこのバーテンダーもパンクスで、言ってみればパンクバーのようなところである。ライブがあるときなどはパンクスでごったがえしている。そこでもまたAndyに近所のバーに連れていかれたのだが、全く違った雰囲気で、ニューヨークの懐の深さを感じる。

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ブルックリンのクラブTHE ACHERON外のスペース。中も客でごった返している。

 THE ACHERONがある周辺はブルックリンの裏通りで、一般観光客ではなかなか行かないような場所に思える。実際、そこから歩いて1ブロックほど行ったバーに向かう途中も、いつ銃声が聞こえてきてもおかしくないような雰囲気であった。弁慶と2人で「これは撃たれるやつじゃないのか? 絶対にはぐれないようにしよう」と緊張して歩いていたのだが、Andyはいたずらでかんしゃく玉のようなものを投げつけ、銃声に近い音をさせたりしていた。おちゃめにもほどがあるニューヨーカーの友人の案内で、ディープなニューヨークを堪能できた。滞在先に戻ったあとも、時差ボケもあるのかライブへの興奮もあるのか、朝方までメンバーだけで飲みながら、翌日のことを話していた。

 明日は1980年代から続く日本のハードコアの代表として呼ばれているライブだ。マンハッタンでライブをやることが少なくなってきている近年、今回DEATH SIDEがマンハッタンの中心部といえる場所の大きなクラブでライブを行なえるというのは、それだけ期待されているということだろう。気を引き締めて明日に備えなくてはならない。

 どんなことがあろうとも、日本のハードコアの魂を伝える。他界してしまったギタリストCHELSEAをメンバー全員が心に思いながら、彼の魂と共にCHELSEAのつくった曲を演奏する。きっとCHELSEAも一緒にニューヨークに来て見守ってくれているだろう。

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