嵐「復活LOVE」はなぜ画期的か? グループの新代表曲を徹底分析

 そして三つ目の理由は、サウンドではなく歌にある。5人のボーカル、それぞれの歌声の個性が、これまでになく際立っているのである。1番のAメロでは、大野智、相葉雅紀、櫻井翔、二宮和也が1人ずつメロディーを歌いつなぎ、メロの後半で松本潤が下ハモを加える展開となっている。サビは5人全員がユニゾンで歌い、その最後に松本潤が「I miss you…」と囁く。2番のAメロも松本潤以外の4人がソロで歌い、ラストでは相葉雅紀が「おかえり」と呟く。竹内まりやが手掛けた歌詞は1サビと2サビと3サビで違う情景を描くストーリー性のある内容で、5人の声が、別れと喪失と再開を描くドラマティックな曲の物語を伝える役割も担っている。

 山下達郎が2月21日放送のラジオ番組『山下達郎のJXグループ サンデー・ソングブック』(JFN系)で語ったことによると、今回のレコーディングにおいては、彼本人が全員の歌入れにフルタイムで立ち会ったとのこと。各自の歌の特徴をはっきりと対比できるよう、なるべく声に加工をかけたり、一人の声を重ねるダブルボーカルの手法はとらない方針で制作したのだという。現場でも5人それぞれが個性的な声を持っていることを感じたと語っていた。

 また、レコーディングに際しては全員がフルコーラスを歌い、その録音をもとに長年嵐の音楽制作を手掛けてきたスタッフが歌のパート割りを決定したという。「意思決定に浮ついたところがない」「実に誠実で的確な仕事ぶり」と、そのスタッフワークを評していた。

 一方、松本潤が同日のラジオ番組「日本郵政グループ presents ジャパモン」(JFN系)にゲスト出演した時に語ったことによると、今回の制作のきっかけになったのは、2013年の嵐のコンサートに山下達郎・竹内まりや夫妻が訪れた時のことだったという。終演後の挨拶で「いやあ、よかったな。こういうライヴだったら、俺にもイメージあるな」と山下達郎が言ったのを聞いて、その場で「書いてください!」とお願いしたのだという。その後に正式に依頼の話を進め、制作過程でも当初は別の誰かがアレンジを担当するはずだったのが、彼らのたっての願いで山下達郎自身の編曲をオファーすることになったそうだ。

 つまりは、メンバー、スタッフ、クリエイター、それぞれが一丸となり、全くブレずに同じ意図を共有して制作されたのが「復活love」という曲ということになる。そうして仕上げられた一曲に、サウンドと歌声の見せ方の変化が仕込まれているわけだ。

 そして四つ目の理由は、嵐というグループ自体の方向性というよりは、音楽ソフトのあり方に関わるポイントだ。この「復活LOVE」は、CDのリリースに先駆け、2月1日から定額制音楽配信サービス「dヒッツ」で独占配信された。30秒のショートバージョンだけでなくフルバージョンも配信され、この曲に加えて嵐の楽曲の中から“別れ・旅立ち”をテーマにした9曲を集めたスペシャルプログラムの配信も行われた。

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