ビヨンセはなぜ『ハーフタイムショー』で社会的メッセージ性の強い新曲を歌ったのか?

Beyoncé「Formation」

 また今回、社会的メッセージを含んだ楽曲を披露したビヨンセが、特に大きな注目を集めている。これまでも『ハーフタイムショー』では、マイケル・ジャクソンやU2などがパフォーマンスを通して平和を訴えるメッセージを発信してきた。ビヨンセのパフォーマンスは、その伝統もリスペクトしたものではないか、と柴氏は付け加える。

「ビヨンセの社会性は重要なポイントです。差別問題に関して強烈な主張を持つ楽曲を披露したという点で、今回の出演は衝撃でした。新曲の中で彼女はアメリカ南部に生まれたアフリカン・アメリカンとしての自分のルーツを歌い上げています。マイケルをイメージさせる衣装で『私はジャクソン5と同じ鼻の穴のかたちだ』と歌うということにも強いメッセージを感じました。また、女性差別に関するリリックや、成功したアフリカン・アメリカンの典型的な振る舞いに踏み込んだリリックも見受けられます。ビヨンセは、様々な社会問題を代弁できる象徴としての役割を今後も果たしていくのではないでしょうか」

 翌週に控える『グラミー賞』でも近年、マドンナが同性婚を認めるパフォーマンスや、ファレル・ウィリアムスが「HAPPY」で「ブラックライヴズマター(黒人の命も大事なんだ)」運動を訴えるパフォーマンスを行っている。国民の関心が高まる場において、社会問題に触れていくというミュージシャンの活動が、娯楽だけにとどまらないアメリカらしいエンターテインメントのあり方を形成しているのかもしれない。

(文=久蔵千恵)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる