SMAPが『Otherside/愛が止まるまでは』で体現した、“新旧ロック”におけるボーカルの違い

 SMAPが9月に出した『Otherside/愛が止まるまでは』は、ロック成分が強い。「Otherside」は、ドラムロールと思い切り歪んだギターから始まるが、このハードロックの響きは、ダンス・ミュージック隆盛の現在にあっては、どことなく懐かしさすら感じる。とは言え「Otherside」はもちろん、古臭い曲になっているわけではない。ビートの抜けの良さ、ホーンを目立たせたアレンジ、ミックスの仕方に至るまで、良い感じに現代的なポップスに仕上がっている。ベイ・シティ・ローラーズ「Saturday Night」のようなチアっぽいノリが、重いサウンドに軽薄さをもたらしているのが良い。基本的にはワイルドな曲ながら、ブルージーな雰囲気を残しているのもポイントだ。作曲を手がけたのは「Top Of The World」にも関わっていたMIYAVIで、「Top Of The World」に引き続き今回も、印象的なギターを披露している。フリーソウル~ハウス系の印象も強いSMAPにおいて、すっかり、重いギターロックの成分を担うような存在になった印象である。

 一方、「愛が止まるまでは」で作詞作曲を手がけたのは、ゲスの極み乙女の川谷絵音である。川谷は以前にも、「アマノジャク」(アルバム『Mr.S』収録)という曲をSMAPに提供しているが、「愛が止まるまでは」も「アマノジャク」と同様、キーボードがとても印象的な、ゲスの極み乙女直径のサウンドが展開されている。ただし、特徴的なのは、イントロのカッティング・ギターによくあらわれているように、曲全体がファンキーなたたずまいをしていることである。このファンキーなテイストが、SMAPのことを考えてのアレンジなのかはわからないが、相性はなかなか良い。

 それにしても、どこか懐かしい「Otherside」と、現在のいわゆるJロック的な「愛が止まるまでは」を並べて聴くと、ボーカルのありかたに大きな違いを感じる。『Mr.S』の記事で「アマノジャク」について触れたとき、そこでのボーカルの譜割りがゲスの極み乙女で歌われるほど細かくない、という点を評価した。SMAPのボーカルは、ゲスの極み乙女と違って、アクセントを細かく切っていくようなボーカルは向かないからだ。しかし今回「愛が止まるまでは」においては、バスドラが4つ打ちになるところで、早口のボーカルとコーラスが披露される。正直、違和感はある。とくに、木村拓哉の息のこもったボーカルが、こなれていないように感じる。BPMもすっかり早くなった野外のDJブースでプレイされるようなロックを歌うには、発声の仕方や喉の開け閉めという微細な点で、ある種のテクニックが必要なのかもしれない。なるほど、ラウドなわけではない、最近のボーカルのある種の傾向というのは、たしかにある気がする。これをラップの影響などと言うつもりはまったくないが、アクセントや発声の点で、ラップのありかたと共振しているような印象もある。

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