吉澤嘉代子が明かす、楽曲の主人公の描き方「どのカードをいつ切るか。それは時期の問題」

吉澤嘉代子が明かす、描く物語と自分の距離

 今年の3月に発表したファーストアルバム『箒星図鑑』で“少女時代”を描き切り、その後のツアーでメジャーデビュー以降の最初のフェイズを終えた吉澤嘉代子。そんな彼女から、早くもセカンドシーズンの幕開けを告げる3枚目のミニアルバム『秘密公園』が届いた。等身大の自分を描くのではなく、物語を描いて聴き手に自分を重ねてもらうというスタイルはそのままに、曲の中の主人公は「美少女」から「綺麗」な女性へと成長を遂げている。その変化は人生の様々な瞬間を曲という形で永遠に封じ込めることであると同時に、彼女の中にある二面性との距離を測る行為の表れでもあるようだ。ORESAMAの小島英也をはじめとした外部のクリエイターとの交流も経て、ますますその世界を広げつつある彼女に、じっくりと話を聞いた。(金子厚武)

「『箒星図鑑』はすごく別格な作品だった」

ーー今年の3月にファーストアルバム『箒星図鑑』が出て、5月に東名阪のツアーがあり、デビュー以降の最初のフェイズに一区切りがついたのかなと思うんですけど、ここまでの活動を振り返って、どんな手応えを感じていますか?

吉澤嘉代子(以下、吉澤):『箒星図鑑』はずっと書きたかった“少女時代”をテーマにしたアルバムだったんです。仕事をするようになって、自分は少女時代から抜け出た感覚があるんですけど、でも作る曲の少女性みたいなのは、自分を構成するもののひとつだと思うので、それを捨てることはできないと思うし、今も現役の少女に曲を聴いてもらいたいっていうのが一番強いんです。ずっと「少女時代をテーマに作らなければならぬ」というか「私が作らなくて誰が作る」みたいな、勝手な使命感を持っていて、それをパッケージするまでは気が気じゃなかったので、『箒星図鑑』を出せたことは、ものすごく大きかったですね。

ーーひとつの使命を果たせて、ちょっと肩の荷が下ろせた?

吉澤:そうですね、ひとつ下ろせました。まだやりたいことはいっぱいあるんですけど、“少女時代”をパッケージすることは初期の段階でやりたかったので、すごく別格な作品だったんです。

ーー2014年のメジャーデビューから、もっと言えば、2013年のインディーズデビューから、ファーストアルバムまでずっと突っ走ってきたと思うんですけど、ツアーが終わって、多少のリフレッシュ期間はあったんですか?

吉澤:デビューしてからリフレッシュ期間はないです(笑)。あ、でも5月にツアーをやった後に、あばらにひびが入ってしまって、レコーディングができなくなって、そのときはリフレッシュ期間というか、何もできなかったですね。

ーーそのときに、どんなことを考えましたか?

吉澤:何もしなくなると、自分がどんどん自分の中で大きくなってしまって、ものすごい自分が醜くて仕方なくなってくるんですよね。自分の醜さが許せなくなってきて、「私大丈夫かな? どうしよう?」って思ったんですけど、ひさしぶりにライブをしたときに、そこから一気に解放されたというか、人前に出ることによって、「自分は人前に出ていい生き物なんだ」みたいなことを人から教えてもらって、自分を許せたというか。なので、ライブって思ってたよりも大切なものだったんだって思いました。

ーー曲やライブで妄想を具現化することによって、自分との距離を保っているというか、バランスを取っているのかもしれないですね。

吉澤:そうですね。何もしなくなると、自分の世界に入り過ぎちゃうのかもしれないです。子供の頃もそうだったのかもしれない。

ーー魔女修行時代っていうことですよね。

吉澤:なので、今も曲を書き続けなければって思うんですけど、この仕事は曲を作る期間と、ツアーとかキャンペーンをする期間と、いろんな時期があるじゃないですか? 家に籠ってる時期と、各地に出っ放しの時期があるっていうのが、たぶん性に合ってるんだと思います。いつも家にいてもダメになっちゃうし、ずっと外に出ててもダメになっちゃうと思うから、そのバランスはすごくいいなって思いますね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる