欧州プログレの奥深き世界ーーマグマ、S・ウィルソン、ムーン・サファリらの“現在地”とは?
プログレ=プログレッシヴ・ロックと聞いて、多くの人が最初に思い出すのは、いわゆる5大バンド――キング・クリムゾン、イエス、ピンク・フロイド、EL&P、ジェネシスのいずれかでしょう。1960年代後半から70年代初頭にかけてデビューした彼らは、従来のロック・ミュージックに、西洋クラシック音楽の構築性や叙情性、ジャズの流れから来たインプロヴィゼーションの流儀などを大胆に導入し、一気に注目を浴びました。このプログレッシヴ・ロックの波は、5大バンドを産んだイギリスだけではなくヨーロッパ全体に広がっていきます。
2015年現在でも、ヨーロッパのプログレの話題は豊富です。ここ日本でも、ヨーロピアン・ロック・フェスVol.2が今月開催される予定で、6月にはフレンチ・プログレの至宝とも言えるマグマが来日、7月には“ザ・ベスト・オブ・イタリアン・ロック”というイベントもあります。そこで本稿では、イギリスを含むヨーロッパ全体のプログレ勢の中から、今こそ注目したいアーティストをピックアップして紹介してみましょう。
マグマ――フレンチ・プログレを牽引し続ける伝説のバンド
まずは今年6月に約5年ぶりとなる来日公演が行われるマグマです。中心人物であるクリスチャン・ヴァンデの音世界を具現化するためのバンドといってもいいでしょう。オドロオドロしい摩訶不思議な雰囲気、極めて構築性の高い長大な楽曲(10分以上はざらで、組曲になると30分以上!)、コバイア語という独自の言語による呪術的なコーラス・ワークなどによって、まさに唯一無二の存在感を放っています。バンドは70年発表のアルバム『コバイア〜マグマ誕生』でデビューした後、3作目『呪われし地球人たちへ』(通称“MDK”)で、その絶対的個性を確立。84年の『メルシー』発表後に一度解散しますが、90年代に復活し、05年の『K.A〜コンタルコス・アンテリア』以降、未完の楽曲を次々にまとめあげていきます。今年2月には最新作『シュラグ・タンズ〜鞭打ちの舞踏曲』が登場しました。来る6月の来日公演でも、その絶対的存在感は遺憾なく発揮されるでしょう。合言葉は“ハマタイ!”です。
フランスのプログレつながりでもう1つ。先日、ゴングを率いたデヴィッド・アレンが亡くなるという悲しい知らせがありました。突き抜けたキャラクターを持つ、愛すべき人物だっただけにとても残念です。彼の残した不思議と人をハッピーにする、スペイシーでファンタジックな音楽は、今後もぜひ多くの人に聴いてもらいたいと思います。