欧州プログレの奥深き世界ーーマグマ、S・ウィルソン、ムーン・サファリらの“現在地”とは?

Gong“I Never Glid Before”



スティーヴン・ウィルソン――現代プログレ・シーンの絶対的カリスマ

 冒頭で名前の出た5大バンドはすべてイギリス出身です。プログレの魅力をポピュラー・ミュージックの世界に広めた功労者である彼らの存在はとても大きく、その後のブリティッシュ・プログレ・シーンも、彼らの影響をいかに引き継ぐか、もしくはいかに脱却するかが大きなテーマになっていたような気がします。そんな彼らに多大なリスペクトをはらいつつ、現在進行形で新たな音楽を創造するアーティストの最右翼がスティーヴン・ウィルソンです。まずは、今年発表された彼のソロ名義での最新作『ハンド・キャンノット・イレース』の曲を聴いてみましょう。

Steven Wilson - Hand. Cannot. Erase. Deluxe Edition Reveal



 叙情的なプログレらしいイントロの後、突如鋭いギター・カッティングによる変拍子のメイン・テーマに入ります。バンド・メンバーは、再結成U.K.などに参加するマルコ・ミネマン(d)や、最新型超絶ギタリストとして脚光を浴びるガスリー・ゴーヴァン(g)、マイルス・デイヴィス・バンドの音楽監督を務めたアダム・ホルツマン(key)、ロバート・フリップとのデュオにも力を入れるテオ・トラヴィス(fl、sax)など、強者揃い。アルバムは、いわゆるプログレ的な楽曲以外にも、メランコリックなメロディが映えるブリティッシュ・ポップ的ナンバーや、エレクトロニクスを駆使した実験的楽曲などもあり、非常に多彩です。英国人らしい、ちょっとひねくれた作り込みも随所に見られます。ちなみに、メンバーのガスリーとマルコが参加するトリオ・バンド、ジ・アリストクラッツも、くらくらするほど超絶的な演奏を聴くことができるので、ぜひチェックを!

ムーン・サファリー――ポップな楽曲で映える圧巻のコーラス・ワーク

 スウェーデンのプログレ・シーンも活況です。北欧を代表する正統派プログレッシヴ・ロック・バンド、フラワー・キングスを筆頭に、RIO JAPAN 2014での来日で話題をさらった超絶変態ユニットのマッツ/モルガン、キング・クリムゾン系統のカオティックなプログレを推し進めるアネクドテンなど、多くのバンドが活躍しています。どれも個性があり魅力的なグループですが、ここでは比較的若手のムーン・サファリを押しておきましょう。

 ムーン・サファリは、2003年に結成された6人編成のバンドです。美しく響くピアノやメロトロンと、流麗なギターの絡みが映えるグループで、楽曲のキャッチーさにはポップ職人的な印象もあります。そして、何と言っても映えるのがクイーンや10ccを想起させる重厚なコーラス・ワーク。昨年10月に単独来日を果たしましたが、幾重にも重なる声のアンサンブルはまさに迫力で、歌の持つ力を再認識させてくれました。余談ですが、その来日時、テレビ東京の番組『Youは何しに日本へ?』に登場して、お茶の間に美声を披露していましたね。最新作は2013年発表の『ヒムラバッケンVol.1』。下記に紹介する曲「Too Young To Say Goodbye」も本作に収録された曲で、ピアノ&ギターのユニゾンや、細かな装飾音符を巧みに組み込むドラミングなど、演奏的な聴きどころも満載です。

Moon Safari“Too Young To Say Goodbye”



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