冬将軍がV系海外進出の歴史を考察
ヴィジュアル系はいかにして海外で支持を集めたか? the GazettEらの活動に見る開拓精神
LOUD PARK 14に the GazettEの参戦が決定した。ボーカル・RUKIは「the GazettE自体メタルというカテゴリーでは無いしアウェイなのは当たり前だけど、同じラウドロック好きなのは変わらん。偏見だらけのジャンルの壁なんてクソ食らえだぜ。」とTwitterで語っている。
何かと偏見の多いヴィジュアル系バンドによる対外イベントへの参加。特に今回のような特化性の高いジャンルのフェスへの参加は、洋楽ファンに歓迎されているとは言えないのが現状だ。the GazettEを軸に、ヴィジュアル系ロックバンドの対外イベント・異ジャンルによる交わりを見ていきたい。
ヴィジュアル系ロックバンドとしての the GazettE
今回に限らず、the GazettEは世間からのヴィジュアル系に対する偏見を一手に請け負ってきたかのようにも思える。都合よく“ヴィジュアル系”という枠を使い分けるバンドもいるが、彼らはそこに括られることを否定はしない。今年の氣志團万博を始め、SUMER SONIC(2011・2013年)、イナズマロックフェス(2011年)、a-nation(2012年)への出演など、敢えてアウェイな場に挑んでいる節もある。そこには、時に揶揄されることがあっても、曲げることのない「ヴィジュアル系ロックバンドとしての誇り」が伺える。
ひしめき合うヴィジュアル系シーンの中で、the GazettEの人気は頭一つ飛び抜けている。同シーンの中で東京ドーム公演(2010年)を行った数少ないバンドであり、そして何より海外で高い人気を誇っている。J-MELOをはじめ、各国の人気ランキングでも常に上位、Facebookの「いいね!」は現在25万に迫る勢いで、日本のバンドの中ではダントツの数だ。音楽SNS・Last.fmでも圧倒的なリスナー数を抱えている。アニメ主題歌がきっかけで火がついたわけでもなく、“Visuak-kei”の知名度とともに人気を伸ばしてきた。だが、本格的な海外ツアーは2013年が初であり、精力的に海外活動を行ってきたわけでもない。では何故これほどまでに人気を得たのか? そこにあるのは徹底したコンセプト・ワークである。
「カセット(テープ)のような古き良き物を今に伝える」意を込めて名付けられた「ガゼット」は、“大日本異端芸者”のキャッチコピーに見られる、アングラ感のある独自の雰囲気を持つバンドだった。2006年に英語表記に変更してから、現在のスタイリッシュなスタイルに傾向していく。メロディアスとヘヴィネス、きらびやかさとダークさ…、 楽曲、サウンド、ヴィジュアル、アートワーク、すべてセルフプロデュースによる一貫した世界観はどこを取ってみてもヴィジュアル系イメージのすべてを凝縮しているのだ。非実在的・二次元的でもあるヴィジュアルアイコンの存在は、あたかも仮想的世界を映し出すようなインターネットを通じ、“Mysterious”、“Cool”と称される“Visual-kei”の代表格バンドにもなっている。
マニアックな音楽性やテクニックを探求していくというよりも、一見したわかりやすさを追求したともいえるスタイルは、コアな音楽ファンには受け入れられづらい部分もあるだろう。だが、細かい理屈や深い分析を用いずとも、はじめてロックに出会い、単純に「カッコイイ」と感じた初期衝動を思い出させてくれるのだ。似たようなバンドが固まって先鋭化していくシーンの中で、あえて矜持を掲げて外に打って出る姿勢は頼もしく思える。己の立ち位置に自信と誇りを持っていなければ出来ないことだろう。