cali≠gariはいかにしてV系シーンに一石を投じたか? 音楽性の進化とバンドの在り方を考察

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cali≠gari『2』(密室ノイローゼ )※正式表記は「2」を左右反転

「cali≠gariから去るメンバーが一人いるということです」

 去る7月7日に「2014年9月27日の日比谷野外音楽堂のライブをもって第7期cali≠gariが終了する」と発表され、様々な憶測が飛び交っていた中、ボーカル・石井秀仁は先日、そのように告げた。

 cali≠gariは1993年に結成され、幾度となくメンバーチェンジを繰り返してきた。その歴史を「第○期」という呼称で分類している。2000年に石井が加入してから現在における「第7期」は一度活動休止期間を挟んだものの、その活動期間は最も長く、メジャーデビューや音楽性の幅の拡大など、人気・実力ともに最強ラインナップとも言われている。

 良くも悪くも “ヴィジュアル系” と括られることが多い中で、枠に収まらない音楽性と自己表現を模索し、進化し続けた “異能派音楽集団・cali≠gari”。現ラインナップである「第7期終了」が発表された今、彼らの魅力を改めて見つめることによって、ロックバンドとしての在り方や、ヴィジュアル系の存在意義を考察したい。

cali≠gariとは

セルフカヴァーミニアルバム 「2」スポット映像

 cali≠gariの音楽は言葉で定義しづらい。「ロック、パンク、歌謡曲、ジャズ…あらゆるジャンルを……」などと、包括的に表すことさえためらうくらいだ。シングル曲のような名刺的な代表曲だけでは、もちろんその音楽性は判断できない。アルバム全体を通して1曲とも思える作り込みや、多彩な楽曲で聴かせることそのものが、彼らの魅力だからだ。しかし彼らは、派手さや音圧などの表面的な手法で多彩さを演出するようなことはない。その演奏は、聴けば聴くほどシンプルでソリッドなものであることが解るだろう。大袈裟なサウンドを用いなくても多彩に感じるのは、艶美な声が楽曲によって器用に変化するボーカリスト・石井秀仁、近年では珍しい鋭利なカッティングが冴えるギタリスト・桜井青、Jロック界屈指の高次元ベーシスト・村井研次郎、それを柔軟に支えるドラマー・武井誠という、アクの強い4人の“井”がひしめきあう集合体だからだ。個々の幅広い技量がそのまま、彼ら独自の音楽性を成しているのである。

密室系からメジャーへ

 元々は大正ロマン〜昭和モダンの雰囲気と80年代のアングラなインディーズの雰囲気を持つバンドであった。本来であればヴィジュアル系黎明期のゴシックな雰囲気を持つ“黒服バンド”王道の流れとも言えるのだが、きらびやかさが主流となった90年代後期のヴィジュアル系シーンでは異色な存在となっていく。桜井の主宰するレーベル「密室ノイローゼ」に所属するバンドは“密室系”と呼ばれ、それを取り巻くシーンは80年代のインディーズシーンでカルトな世界観を持っていたナゴムレコードになぞらえ、“ネオナゴム”というムーブメントが起きた。メジャーのヴィジュアル系の“陽”とは相反する “陰”の部分である。

cali≠gari / 娑婆乱打

 そして、ニューウェーヴへの造詣が深い石井の加入により、楽曲の幅はさらに広がる。何よりもフロントマンとしての圧倒的なオーラが、桜井青の持つ“新宿二丁目ノリ”と化学反応を起こし、狂気的ともいえるcali≠gariの世界を炸裂させた。一歩間違えばただのイロモノになってしまいそうなことも、センスよくスタイリッシュに表現できるようになったのである。独創性を持ち味とするインディーズバンドにとっては、マイナス要素にも成り得る“メジャー感”をうまく取り入れることで、メジャーデビューへと駒を進めた好例といえよう。

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